プロ野球亭日乗BACK NUMBER
巨人・高橋監督は「甘ちゃん」ではない。
ベンチでの無表情さが、怖くて深い。
posted2016/05/03 09:00
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Hideki Sugiyama
開幕から1カ月が経ったセ・リーグのペナントレースは、昨年の覇者・ヤクルトがチーム防御率5.38(記録は全て4月28日時点)と投手陣の崩壊でスタートダッシュに失敗。逆に下馬評の低かった中日が新外国人・ビシエドの大爆発を起爆剤に打線が活性化し、広島もリーグトップのチーム打率を叩き出す強力打線を軸に上位に食い込む健闘を見せている。
一方、新監督を迎えた阪神、DeNA、巨人の3チームは、ラミレス新監督のDeNAが自慢の打線がチーム打率2割2分6厘と低迷して最下位に沈んでしまったが、巨人と阪神の両チームは堅実な戦いぶりで上位争いを演じている。
中でも高橋由伸新監督が率いる巨人は、数字だけを見ると優勝を逃した昨年とあまり代わり映えのしない内容ながら、それでも開幕からほぼ首位を守って強い勝ち方を見せている。
その好調の秘密の一つは高橋新監督の“頑固采配”に見えてくるのだ。
「打線はできるなら固定したいと思っています」
開幕前にこう語っていたように、1番の長野から立岡、坂本、ギャレット、クルーズと続く基本オーダーはいまのところ不変。3番の坂本勇人内野手が下半身の不調で外れた4月13日のヤクルト戦からの5試合を除いて、全てこの並びで試合に臨んでいる。
下位打線も7番の村田と8番の小林誠はこれまた不動で、開幕から6番だけが投手の左右に合わせて調子のいい選手を抜擢するスポットとなっていた。ただ、この6番も4月16日の広島戦から8試合は好調の亀井善行外野手に固定され、監督の望んだ通りにオーダーはほぼ不動となっているわけである。
期待の4番は打率急降下中だが……。
ただ、だからといって就任時に掲げた打線の強化が達成されたのかといえば、数字的にはそれほどの結果は出ていない。
4番に据えたギャレット・ジョーンズ外野手が開幕直後は期待通りの活躍を見せていたが、対戦が一回りした頃から弱点の内角を厳しく攻められて、逆に外角に流れるボールにも手を出すという悪循環で打率が急降下。現時点で打率は2割2分4厘と打撃30傑の下から4番目だが、それでも高橋監督は頑なに助っ人の名前を先発オーダーの4番目に書き続けている。