詳説日本野球研究BACK NUMBER
新監督の色は、若手の抜擢に出る。
各球団で重用されそうな選手を探せ。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byKiichi Matsumoto
posted2016/03/06 10:40
就任1年目から、世代交代という難しい局面に直面する巨人の高橋由伸監督。
西武の多和田は誰もが起用したくなる存在。
多和田は今永以上にストレートが魅力的だ。投手のステップは6足半から7足が普通だが、多和田の場合は7足半に達する。体操選手の開脚、あるいは力士の股割りのように見えるというのは決してオーバーな比喩ではない。このステップの広さが早い左肩の開きを防ぎ、球持ちの長さをもたらしている。さらにカットボール、フォークボールのキレも一級品で、監督なら誰でも早く起用したくなるだろう。
西武には故根本陸夫・管理部長時代から続く、“育てながら勝つ”伝統がある。さらに田邊徳雄監督は森友哉、高橋光成の起用でわかるように抜擢を躊躇しない指揮官。多和田の早い起用は十分に考えられる。
広島の岡田、横山は“未完の大器”という共通点があるが、追い風になるのが前田健太のメジャー移籍だ。ストレート以外でも岡田はスライダー、横山はカットボール、フォークボールのキレのよさでも目を引き、ともに2月下旬に行われたオープン戦ではヤクルト、巨人相手に2回投げ、無失点で切り抜けている。
岡田、横山以外でも、2年目の高校卒左腕・塹江敦哉に抜擢の可能性がある。昨年6月のNPB選抜対大学日本代表戦ではNPB選抜の3番手として登板、大学日本代表の1番佐藤拓也(立教大)、2番高山俊(明治大→阪神1位)、3番吉田正尚(青山学院大→オリックス1位)を三者凡退に退けている。とくに内角に149キロのストレートを投じ、高山俊を空振りの三振に仕留めたシーンは強く心に残っている。
打者では阪神の高山、巨人の重信か。
打者ではその高山と、巨人の重信が積極的に起用されている。高山は「強く振る」という金本イズムをキャンプ中から叩き込まれているが、東京六大学リーグの通算安打記録を樹立した原動力は「ミート」。大学4年間の実績と新監督の方針が真逆なのが1年目に関しては不安要素だ。
重信は単純にチーム内に同じタイプの選手が多いのが不安材料になる。橋本到、立岡宗一郎、松本哲也、鈴木尚広という俊足好打の左打者が外野手にいて(鈴木は両打ち)、他にも長野久義、亀井善行、大田泰示に新外国人のギャレットもいる。この一角を崩して、1年目からレギュラーに近い位置に入り込むのは至難の業と言っていい。