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新監督の色は、若手の抜擢に出る。
各球団で重用されそうな選手を探せ。
posted2016/03/06 10:40
text by
小関順二Junji Koseki
photograph by
Kiichi Matsumoto
キャンプが終わり、各球団はオープン戦を戦いながら新戦力を見極める時期に入った。最も興味のあるテーマは「今年ブレークする若手は誰なのか」だが、その前にセ・リーグは3球団の監督が替わり、パ・リーグも新監督が1人、2年目が2人と若手が揃ったので、若い監督の特性にまず触れたい。
一般的に、新監督は自分の色を出そうとする。過去を振り返れば、2期目の巨人監督に就任した長嶋茂雄は、高校卒新人の松井秀喜を57試合に抜擢した。前年に入団した高校卒野手の1年目はイチローが40試合、中村紀洋が11試合なので、松井の57試合というのは際立っている(大学卒の金本知憲<当時広島>は5試合)。
新人年から40試合→43試合と推移したイチローを'94年に抜擢してスターに押し上げたのは、オリックス監督1年目の仰木彬だ。近鉄監督1年目の'88年には吉井理人を50試合登板で10勝2敗、24セーブ、山崎慎太郎を25試合登板で13勝7敗に導いているが、2人はともに一軍実績はほとんどない高校卒4、5年だった。
小久保を抜擢した王、岩村、五十嵐を見出した若松。
'88年限りで巨人監督を辞任して以来、7年ぶりにダイエーの監督に就任したのが王貞治だ。王は青山学院大学から逆指名で入団しながら1年目に38安打と低迷した小久保裕紀を、監督就任1年目の'95年に130試合すべてに起用、小久保は28本塁打を放って本塁打王に輝いている。巨人監督に就任した'84年には抜擢と言えるような起用をしていないので、大きな変化と言っていい。
'99年には、野村克也から引き継いで若松勉がヤクルト監督に就任した。このときのチームのテーマが「若返り」だったこともあり、三塁を池山隆寛から高校卒3年目の岩村明憲に交代、前年0安打の岩村は74安打を放って期待に応え、一軍の実績がゼロだった高校卒2年目の五十嵐亮太も36試合に起用され、リリーフ人生をスタートさせている。
岡田彰布も、監督就任1年目に思い切った若手の抜擢をしている。阪神監督に就任した'04年には早稲田大から鳴り物入りで入団した新人、鳥谷敬を101試合に抜擢。オリックス監督に就任した'10年には前年22安打のT-岡田(高校卒5年目)を129試合に抜擢して、T-岡田は33本塁打を放って本塁打王に輝いている。老舗意識が強く冒険を好まない阪神、オリックスでの抜擢だけに、岡田の凄みが伝わってくる選手起用だ。