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'16年のセンバツ注目校総ざらい!
ポイントは“左腕の好投手”。
posted2016/02/02 07:00
text by
小関順二Junji Koseki
photograph by
Kyodo News
「センバツを制するのは左腕の好投手がいるチーム」というのがセンバツではよく知られるジンクスである。
'10年の興南には島袋洋奨(ソフトバンク)、'13年の浦和学院には小島和哉(早稲田大)、'14年優勝校の龍谷大平安には高橋奎二(ヤクルト3位)――。一般的に左投げの人口は少ないが、'10年以降の優勝校の主力3投手は左腕である。秋に結成された新チームの実戦経験はおおよそ3カ月で、この短い期間の中で各校とも右投手ほど多くない左投手との対戦は限られ、さらに高校野球は右投げ左打ちの選手が多い。春先のセンバツ大会で左腕が活躍する理由の1つだろう。
左腕の好投手が多い今年の大会。
今年はその左腕に好投手が多い。関東勢では昨年から高校野球ファンの間で知られていた鈴木昭汰(常総学院)、高橋昂也(花咲徳栄)、早川隆久(木更津総合)が代表格で、ストレートの最速は鈴木と早川が142、3キロ、高橋が145キロなので“超”の字がつくほど速くはない。その代わり鈴木は縦変化のスライダー、高橋は縦スライダーとチェンジアップ、早川は横変化のスライダーに持ち味があり、3人とも緩急や左右の出し入れで打者を翻弄する技巧も備えている。
大阪桐蔭の高山優希も昨年の秋口までは3投手と同様に本格派と技巧派が同居する“好投手”タイプだった。それが11月の明治神宮大会、高松商戦で140キロ前後だったストレートがたびたび140キロ台後半から150キロを計測し、一躍、寺島成輝(履正社、今年のセンバツには出場しない)と並ぶ左腕のドラフト1位候補になった。90キロ台のカーブを交えた緩急、スライダーとシンカーを駆使した左右の揺さぶりなど技巧色の強かった高山がわずか1試合で印象を変えたわけだが、技巧が失われたわけではない。引き出しが増え、ピッチングに奥行きが出てきたと評価するべきだろう。
右腕の注目投手は?
右腕では明治神宮大会の準優勝校、敦賀気比のエース・山崎颯一郎と中国大会の覇者、創志学園のエース・高田萌生が双璧。この両者は明治神宮大会2回戦で当っている。山崎が被安打4、失点1の完投で、失点5の高田を退けた試合で、188cmの長身から投げ下ろすストレートと、縦変化のカーブ、フォークボールを織り交ぜた高低の攻めが見事だった。
高田は謳い文句だった「最速150キロのストレート」が143キロに減速した分、怖さがなかった。出どころの一定しない腕の振りや外角主体だった配球もひと冬越してどう変化したのか、実はセンバツを見る最大の楽しみである。