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'16年のセンバツ注目校総ざらい!
ポイントは“左腕の好投手”。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byKyodo News
posted2016/02/02 07:00
第1回選抜優勝校でもある高松商業は、明治神宮大会で昨年の選抜優勝校・敦賀気比を下し初優勝。四国に追加の出場枠をもたらした。
明治神宮大会優勝・高松商の実力は?
敦賀気比では3番林中勇輝(遊撃手)が明治神宮大会の創志学園戦、高田からスライダーをタイムリー二塁打、ストレートをライトへ三塁打を放ち(二塁手がはじいた打球がライト線へ)、準決勝、決勝でもタイムリーを放ち全国区の実力を見せつけた。
明治神宮大会優勝の高松商は、公立校が強豪の私立を破るにはこれしかないという攻撃で敦賀気比を決勝で破った。7回が終わった時点で0対3は敗色濃厚。ところが山崎が突然コントロールを乱したのに乗じ、8回は2つの内野安打と四球も交えた5安打の集中打で5点を奪い、9回には連続バント安打などを絡め決定的な3点を加え、初優勝を飾った。
打者で注目したのは1番安西翼(中堅手)の俊足で、9回のバント安打のときの一塁到達は私が計測した中では「バント部門」の総合13位だった。停滞が続く香川勢のうっ憤を晴らすような溌剌とした走攻守で秋の日本一に輝き、この優勝によって四国に出場枠が1つもたらされた。
以上の中から常総学院、花咲徳栄、木更津総合、敦賀気比、東邦、大阪桐蔭、創志学園、高松商の8校を優勝候補に選んだ。さらに絞り込んで敦賀気比、大阪桐蔭を2強、伏兵には躍進めざましい東北勢の中から青森山田、藤嶋を擁する東邦を指名した。
21世紀枠と、その意義。
最後に21世紀枠で選出された釜石と長田に触れたい。釜石は'11年の東日本大震災の被災地、長田は'95年の阪神・淡路大震災の被災地という共通点がある。最近『河北新報のいちばん長い日 震災下の地元紙』(文春文庫)を読んで次のような文章に胸を衝かれた。
「歳月を重ねるにつれて、伝え続ける、追い続けることの難しさは増している」
「『震災報道はいつまで続くのか』との吐露も現場からは漏れてくる」
自らも被災者である地元紙・河北新報ですら震災を語り継ぐことの難しさに直面しているのかと思った。そしてこれらの問に、同書は次のような言葉で答えている。
「地域で暮らす一人一人の姿と声を拾い上げて社会に行動を呼びかけることも、私たちの本来の仕事だった。被災地、被災者の取材と報道を通して、私たちはこれまで向き合ってきたテーマに丸ごと取り組んでいることになる。終わりがあるはずもない」
(「文庫版へのあとがき」より)
こういう文章を読むと、釜石、長田両校の選出や、批判されがちな21世紀枠の意義もよく理解できる。2つの震災を風化させないで語り継ぐ、そういう思いを高校野球も共有していこう、という意思表示がこの両校の選出には込められていると思う。
'17年春に土庄(とのしょう)高との合併を控えている小豆島は昨年秋の香川県大会で高松商を延長12回の末に2対1で破っているので文句なし。長く記憶にとどめていきたい。