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前米国王者ブラウンが代表漏れ!?
世界選手権に影響する羽生の存在。 

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田村明子

田村明子Akiko Tamura

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posted2016/01/31 08:00

前米国王者ブラウンが代表漏れ!?世界選手権に影響する羽生の存在。<Number Web> photograph by Getty Images

全米選手権で優勝したアダム・リッポンのジャンプ。世界ジュニア2連覇など輝かしい戦績を持つ。

フリーで4度4回転を降りたネイサン・チェン。

 一方2位に終わったマックス・アーロンは、SPで1度、フリーで2度の4回転サルコウを降りている。そして今回3位に入ったジュニアGPファイナルチャンピオン、16歳のネイサン・チェンは、フリーでなんと4度の4回転を着氷した。

 そんな中でリッポンが全米タイトルを手にしたことは、議論を醸した。リッポンは、自己弁護をするように会見でこうも語っている。

「選手がみんなユヅルみたいな演技をするようになったら、試合は面白くない。スピンが得意な選手がいて、パフォーマンスが得意な選手、ジャンプの得意な選手がいる。1つの分野だけで競うスポーツではないのです。ジャンプ競争ではないし、振付競争でも、スピン競争でもありません」

 要するに、フィギュアスケートは各自の個性の総合力、と言いたいのだろう。

「全米男子の結果には失望」と4回転ループの先駆者。

 だが長年ニュージャージーを基盤にしてきたモスクワ生まれのコーチ、ロマン・セロフはこう語った。

「全米男子の結果にはがっかりした。男子なのだから、4回転に挑まなくては。SPでも(2位だった)ロス・マイナーが、いくらノーミスでも4回転なしで90点台なんて、あり得ない」

 実はセロフは、2001年前後に4回転ループに挑んでいた選手だ。試合で成功したことはなかったものの、練習では何度も降りていたという。羽生結弦はエキジビションで何度か降りたこのジャンプだが、公式にはまだ誰も成功したことはない。その4回転ループに10年以上も前に挑んでいた先駆者なのだ。

「日本の選手などが頑張ったおかげで、(4回転に関して)今ようやく盛り上がってきた。でもアメリカの男子はこのままではダメ」とセロフは主張する。

平昌をにらみ、チェンの将来性を見込んだUSFSA。

 世界のトップ選手たちがフリーに3度の4回転を組み込んでいる現在、4回転を跳べない選手を全米チャンピオンとして世界選手権に送るのはどんなものか――という意見も当然USFSAの中で出ただろう。だがリッポンは全米チャンピオン。代表にしないわけにはいかない。

 実はブラウンもまた、まだ4回転を試合で成功させたことのない、いわばリッポンと同じように優れた表現力を最大の武器とする選手だ。USFSAとしても、男子代表3人のうち2人は4回転を跳べない選手という選択はできなかったのに違いない。

 同時にまだ16歳のネイサン・チェンを、今から大舞台を踏ませて平昌五輪に向けて売り込んでいこうという思惑もあっただろう。ジュニア世界選手権とシニア選手権の両方の代表にする、というのは通常ではあまり聞かない話である。

【次ページ】 結局、怪我で欠場となったチェン。

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