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厳しい批判に晒された'15年のホンダ。
メルセデスを倒す日まで耐え忍ぶ……。
posted2016/01/02 10:40
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph by
AFLO
不本意な成績のまま終わった2015年のホンダF1。そのリーダーである新井康久総責任者が、批判されながらも発し続けた談話の中で、忘れ得ぬ言葉がある。
「私が批判されるだけならいいですが、ホンダ全体を否定されることは、大勢の社員やホンダとともに仕事をしている人たちを傷つけることなる。さらにホンダを応援してくれているファンの方々に相当な誤解を招くことにつながる。それだけはなんとかしなければならない」
この言葉に、'15年にホンダが抱えていた苦悩を感じた。それは、F1を戦ううえで日本企業が必ず経験する文化の違いである。個人を尊重するヨーロッパ社会と、組織を重んじる日本の風土との差だ。
マクラーレン内部からも噴出したホンダ批判。
'08年以来、7年ぶりにF1に復帰したホンダだったが、結果は19戦中、入賞したグランプリは5回にとどまり、コンストラクターズ選手権順位は10チーム中、9位に終わった。
ホンダとしては撤退した'08年と同じ成績だが、F1界でフェラーリに次ぐ伝統を持つマクラーレンにとっては、'66年にF1に参戦して以来、最低順位という屈辱だった。そのため、ホンダへの批判はヨーロッパのメディアだけでなく、パートナーであるマクラーレン内部からもシーズンが進むにつれて強くなっていった。そのボルテージはヨーロッパラウンド最終戦となったイタリアGPで、マックスに達した。
2台そろってQ1落ちに終わった予選後に開かれたマクラーレン・ホンダが主催する会見では、ドライバー2人、チームの現場責任者であるエリック・ブーリエ(レーシングディレクター)とともに出席した新井総責任者が、集中砲火とも思えるような非難をメディアから受けた。
後日、その会見はマクラーレンの広報が、故意に新井総責任者を批判する質問をするようイギリス人メディアと密談して行われた茶番劇だったと、あるイギリス人ジャーナリストから聞いた。
冒頭の新井総責任者のコメントは、その会見の後に、日本人メディア用に設定された会見の中で発せられたものである。