野球クロスロードBACK NUMBER
不調時の変わらぬ練習が貯金を作る。
山田&柳田、トリプルスリーの必然。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byHideki Sugiyama
posted2015/12/08 10:40
柳田悠岐は今年、得点、塁打数、四球、打率、出塁率、長打率、OPSでリーグトップに輝いた。
計11種類のティー打撃をルーティンにした山田。
'14年のシーズンから始めたティー打撃は、ミートポイントにボールを上げる一般的な形式から、ワンバウンドを打つ、バットをクロスさせてからボールを打つ、バランスボールに乗って打つなど11種類にもわたる。山田はそれを、1日も休まず試合前に続けたことによって、安定したパフォーマンスを続けられたと語る。
そして今季もこのトレーニングを継続した。開幕から調子が上がらず、5月6日のDeNA戦では2割4分2厘まで打率が落ちた。それでも日々のルーティンを欠かさなかったどころか、「ゴロを意識する」とさらなる課題の克服に取り組んだことで、復調を遂げていったのだ。
「僕はね、油断はしないです。常に相手がいることだし勝負の世界なんで、いつもどおりやるだけです」
トリプルスリーを達成した9月6日の広島戦の後も、山田はそう言って気持ちを引き締めていた。日々の積み重ねを意識しているからこその言葉だ。
柳田は不振の7月に「めっちゃ筋トレしましたね」。
今季の柳田もそうだ。そもそも、「貯金」という言葉を用いたのは彼だった。
6月3日のDeNA戦で横浜スタジアムのバックスクリーンのLEDパネルを破壊する推定150メートル弾を放つなど、開幕から豪快な打撃を披露し続けていたが、7月は月間打率2割6分2厘と急激に打てなくなった。
野手にとって夏場は疲労のピークを迎える。初めてレギュラーとなった選手は異口同音に、「自分がこうしたい、と思っていても体が動かない」と嘆いているほどだ。
柳田もその苦難を経ていた。昨年8月に2割7分7厘と不振に喘いだ。今年の7月、「同じ轍は踏まない」とばかりに取り組んだのが、ウェイトトレーニングだった。
「去年の夏場に全然打てない時は、体もきつかったしトレーニングをあまりしていなかったんですよ。それで打てない時期がズルズル続いちゃったんで、今年の7月はめっちゃ筋トレをしましたね。ウェイトやって体を筋肉痛にして。まだまだシーズンは長いと思っていたんで、『打てないんだし、貯金しよう』って感じでやりましたね」
体を休ませれば疲労は回復できるかもしれない。しかし、ほかの時期よりも体力の消耗が激しい夏場に体を追い込まなければ、疲労と回復の繰り返しになるだけで、スランプの脱却、パフォーマンスの向上は望めなくなる。つまり、「その場しのぎ」となってしまうわけだ。柳田はそんな負のスパイラルを恐れたからこそ、自分を追い込んだのだ。