錦織圭、頂への挑戦BACK NUMBER
プロテニス選手の高齢化が進む――。
錦織圭は、東京五輪で活躍できるか?
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byHiromasa Mano
posted2015/07/22 10:50
始めてATPツアーで優勝した18歳の頃の錦織。あれからもう7年が過ぎ、今季は世界ランキング4位まで記録するまでになった。
錦織とフェデラーに共通する、その天才性とは?
毎年、ウィンブルドン期間中に『インデペンデント』紙でコラムを担当するニック・ボロテリー氏――錦織が13歳の頃から拠点とするIMGアカデミーの創立者であるカリスマコーチは、教え子たちを紹介する文の中であらためて錦織についてこう書いた。
「ケイが打つショットのいくつかは、世界中のどのコーチも教えることができないものだ。彼の才能はまさに天性。あの手さばきの素早さ――彼ならマジシャンとしてでもやっていけるだろう」
また、ウィンブルドン前の記者会見での錦織とのやり取りの中に、フェデラーとの共通性を垣間見るものがあった。
今年の芝の感触を聞いたときのことだ。開幕の前後にはトップ選手の記者会見で、今年の芝は短いとか長いとか、速いとか遅いとかといった選手の印象が話題になるもの。それで錦織にも尋ねたのだが、答えは「ちょっとばかり速いかな。でもそこらへんは鈍いので、他の人に聞いてください(笑)」。
天才的なショットメーカーと称される錦織の感覚は、凡人には理解できないほど研ぎ澄まされているのかと思いきや、鈍い!?
似たような「?」をフェデラーにも感じることがある。
錦織がフェデラーと異なる点は、怪我の多さ。
彼は、サーフェスやボールについて聞かれれば錦織のように「他の人に聞いて」とは言わず堂々とコメントするが、他の大多数の選手の意見と正反対ということがたびたびあるのだ。解説者たちは、「たとえ全員が『速い』と感じても、ロジャーが遅いと言えば遅いんだ」と笑い飛ばすが、天才の感覚とは意外に「鈍い」のか、あるいはいかようにも基準を変動させられるのか……。
一方で、残念ながら錦織がフェデラーと大きく違う点は、昔からケガが多かったことだ。
恐らく選手寿命はそう長くないだろうと懸念されていた。今回のふくらはぎのケガは、久しぶりに心配がぶり返す材料となったが、今はもう夏のハードコート・シーズンに向けて練習を再開しているという。それを聞くだけで万々歳という気分でもないが、ウィンブルドンでの棄権という決断もこの先のキャリアを意識してのことだったに違いない。