錦織圭、頂への挑戦BACK NUMBER
プロテニス選手の高齢化が進む――。
錦織圭は、東京五輪で活躍できるか?
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byHiromasa Mano
posted2015/07/22 10:50
始めてATPツアーで優勝した18歳の頃の錦織。あれからもう7年が過ぎ、今季は世界ランキング4位まで記録するまでになった。
圧倒的に増えてきた、30歳以上の上位ランカー。
“若手”からの脱却を目指した昨シーズン、トップ10入りからさらにはトップ5とトントン拍子に駆け上がり、グランドスラムのベスト8どころか決勝までも経験した。今の錦織は「おじいちゃん発言」から1つ年をとっているわけだが、あのときほど自分の年齢に焦りを感じてはいないはずだ。
今回のウィンブルドンの結果が示すように、テニス界の年齢に関する意識は、この1年で大きく変わってきている。
8月には34歳を迎えるというロジャー・フェデラーが昨年の秋から2位をキープし続け、29歳当時のスタン・ワウリンカが昨年の全豪オープンでのグランドスラム初優勝を果たしたのに続いて、30歳になって迎えた今年の全仏オープンも制した。錦織が18歳で最初に世界的に脚光を浴びた'08年の年末ランキングでは、30歳以上の最高ランカーは30歳になったばかりのラデク・ステパネクの27位だったが、今週の最新ランキングでは、2位のロジャー・フェデラー(33歳)を筆頭に、4位スタニスラス・バブリンカ(30歳)、7位のダビド・フェレール(33歳)とトップ10に3人もいる。トップ20まで広げると、11位のジル・シモン(30歳)、12位のジョーウィルフライ・ツォンガ(30歳)、18位のジョン・イズナー(30歳)、19位のフェリシアーノ・ロペス(33歳)とさらに4人増える。
フェデラーは長くプレーするために「天才」をやめた。
なんといっても2位のフェデラーの存在が際立つが、彼は天才であるがゆえに体を酷使せず長い寿命を可能にしたという声も聞く。しかし、それだけではない。若い頃からひたすら長命を目的としたフィットネストレーニングを重視し、ATPの苛酷なルールに縛られないスケジュールを組んできた計画性の賜物だ。
かつて、ナンバーワンになった頃を振り返って「僕は天才として生きる道を捨てた」と語ったことがあるが、それはこういうことだったのかと今にして思う。賞金よりも、トロフィーよりも、10年先も変わらぬプレーを維持することを最優先してきたゆえに今があるのだ。
錦織のことを書いていると、このようにどうしてもフェデラーについての言及率が高くなるのだが、それはフェデラーが錦織にとっての長年の憧れと尊敬の存在であることに加え、錦織もまた「天才」と呼ばれるタイプのプレーヤーであるからだろう。