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「人種差別行為は刑事罰に相当する」SVリーグで起きた“差別発言”…イタリア在住記者が抱いた違和感とは?「本心かわからないが、選手も観客も笑っていた」
posted2025/03/06 11:05

ネットを挟んで口論するマチェイ・ムザイ(左)とミゲル・ロペス。一線を越えた発言は熱戦に水を差した
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弓削高志Takashi Yuge
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YUTAKA/AFLO SPORT
3月1日にSVリーグで起きた問題が大きな波紋を呼んでいる。
東京グレートベアーズ(以下、東京GB)のOPマチェイ・ムザイ(30歳、ポーランド)が、第2セットで大阪ブルテオン(以下、大阪B)のOHミゲル・ロペス(27歳、キューバ)に対し、差別的・侮辱的な言葉を用いて挑発したとされる事件だ。
混乱の中、主審は両チームへレッドカードを提示する異例の判断を下した。激昂する外国人助っ人勢をなだめる日本人選手たち。試合は1セット目を落とした大阪Bが盛り返し、セットカウント3-1でアウェーでの白星を上げたが、有明コロシアムを埋めた9842人の大観衆は詳しい事態を飲み込めず、さぞ困惑したにちがいない。
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SVリーグは、翌2日の試合に対するムザイの出場停止処分を即日決定。追って規律委員会から処分を下される見通しだが、肌の色を侮辱する発言だったことが確認・共有されるだろう。
極めて平穏だった日本バレー界は、どこか遠い世界の出来事と思われていた問題に直面した。「世界最高峰のリーグを目指す」と発足したSVリーグはどう対処すべきなのか。
スポーツ界で後を絶たない人種差別事件
筆者が暮らすイタリアのスポーツ界では、人種差別行為が後を絶たない。
同国内務省と警察機構が組織する人種差別監察機関「OSCAD」の報告によれば、2023年にスポーツ競技活動において確認された人種差別事件は計57件に上る。51件がサッカー界のもので、3件がバスケット、ボクシングとホッケー、テニスでそれぞれ1件ずつ。全体としては前年の49件から増加している。
記憶に新しいのは昨年3月、サッカーのセリエAで強豪インテルのDFフランチェスコ・アチェルビが対戦相手ナポリのDFフアン・ジェズス(ブラジル)に対し、肌の色を侮辱した事件だ。