甲子園制覇の高校No.1捕手“まさかの指名漏れ”の裏側で…「正直、自分は指名されないと…」ヤクルト“ドラ4指名”同級生の現在「寿命の長い選手に」

　昨夏の甲子園。春夏連覇を期待された健大高崎は2回戦で智弁学園に1－2で敗退した。

　号泣する主将の箱山遥人（現トヨタ自動車）、うつむいたまま動かない2年生エースの石垣元気ら消沈する選手たちがあふれるインタビュー場で、すっきりした表情を浮かべていたのが1番を打つ田中陽翔だった。

　優勝候補と目されるも、あまりにも早い敗戦だった。通常なら箱山のように感情を全面に出し悔しがる球児がほとんどだろう。私は恐る恐る田中に近づき、その表情の理由を尋ねた。すると穏やかな笑顔を浮かべ、田中はこう返した。

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「自分としてはやり切ったんで。負けたのは悔しいですけど、個人的には（この試合で）3安打できて、やってきたことを全て出せたかなと思います」

昨春のセンバツを制した健大高崎で1番打者を務めた田中　©JIJI PRESS

号泣の仲間をよそに…クールだった甲子園での姿

　周囲からは複数の選手のむせび泣く声が響く中、田中の清々しい表情は多少のギャップもあった。だが、さらに涙ひとつ流さず田中はこう続けた。

「次の舞台で、この思いは晴らします」

　敗戦直後なのに、こんなにドライな選手もいるのだなと反対に感心させられてしまった。すると、田中は自身の進路についてすらすらと話し始めた。

「本当は大学、決まっていたんです。でも、その大学に断られて別の大学に決まったんです。自分としては（優勝した）センバツも含めて評判のいい投手から初見で打てたこともそうですし、甲子園のような大観衆の中でプレーできることほど幸せなことはないと思いました。大舞台に立って自信をつけていたつもりでしたけど、（断られたことで）自分の実力が否定されたような気がして……。プロに挑戦するのもありなのかなと思ったんです」

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