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今のジョコビッチは“史上最強”か。
充実のフェデラーの前にまたも……。
posted2015/07/14 16:30
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
AFLO
ウィンブルドン男子シングルス準決勝、ロジャー・フェデラーはアンディ・マレーを寸分の隙を見せることなく「片付けた」。
マレーも充実していた。ブレイクポイントを握られるたびにしのぎ、感情をむき出しにした。観客は沸いた。
しかし、マレーはナイーブ過ぎたかもしれない。冷静なフェデラーは、決して自らのリズムを崩すことはなかった。
33歳の到達点。誰も成し遂げたことのないウィンブルドン8度目の優勝に向けて、最高の調整が出来たという、確固たる「自信」がみなぎっていた。
しかし、ノバク・ジョコビッチはそれ以上に強かった。
ひょっとしたら、フェデラーは史上最強の選手を相手にしていたのではないか?
来る8月8日で34歳を迎えるフェデラー。同じくウィンブルドンで7回の優勝を誇るピート・サンプラスが最後の優勝を飾ったのは29歳の時だ。
フェデラーが30代中盤でマレーを圧倒する力を持っているのは驚くべきことだ。トレーニング理論、栄養学の発達などもあるが、ディシプリン(規律)とモチベーションがフェデラー自身になければ到達できない領域でプレーしている。
勝っていれば伝説になる第2セットのタイブレーク。
しかしジョコビッチ相手には、フェデラーのプレーが2セット目までしか通用しない。
今回の決勝でも第1セット、第2セットともにタイブレークにもつれ込んだが、特にフェデラーが12-10で取った第2セットのタイブレークは、名勝負と呼ぶにふさわしい内容だった(もし、フェデラーが勝っていれば語り継がれることになっただろう)。
しかし、第3セットになってプレーの精度が落ちる。加えて、雨による中断もプラスにならなかった(かつてのナダルとの決勝戦を思い出したのだが)。
準決勝と決勝のデータを比較すると、明らかに違うのは、ふたつのスタッツだ。
「ブレイクポイント」
「アンフォースト・エラー」
フェデラーは準決勝までの6試合で、相手にブレイクポイントを握られたのはわずか4回、しかもブレイクされたのは準々決勝のシモン戦の一度だけだ。好調のマレーにさえ、一度しかブレイクポイントを与えていない。
まさに、「芝の王者」にふさわしいサービスゲームを展開していたのである。