マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
早実・清宮幸太郎が持つ稀有な“手”。
パワー以上に目立つ、圧倒的ミート力。
posted2015/04/16 11:30
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Kyodo News
球場のスタンドにあがって、早稲田実業高の選手たちの密集の中に、清宮幸太郎選手を探した。
パッと見てわからない。
背番号19と聞いていたので、選手の背中で探してみたら、いた、いた。
ゴロンとした感じなんだなぁ……と思った。
184cmと聞いていたのにそんなに大きく見えないのは、97kgという体重でユニフォーム姿が丸っこいせいなのだろう。
高校に入ったばっかりの少年だ。“幼児体型”のなごりもまだあるのかもしれない。
雨で1日延びた高校野球公式戦デビュー。
球場も「神宮第2」から「立川市営」に替わり、多摩川べりの小さな球場は周囲を巡らす桜を満開にして待っていてくれた。
最高の舞台。
一塁を守っている姿をスタンドから見ると、ライトスタンドの向こうに並ぶ満開の桜を彼がひとりで背負っているようにも見えて、きっと野球の神さまもこれだけの逸材の新たな門出なのだから、ふさわしい舞台を用意して待っていたのだろう……と勝手に感心してしまったものだ。
ウワサには聞いていた、調布リトルシニアの主砲。
清宮幸太郎くんという。いかにもそれらしい爽快な響きだ。
昔なら、東映の時代劇スターにピッタリな名前だろう。その場合は、「清宮」を「せいみや」と読ませてもよいだろう。
余計な想像までが広がっていく。
実は私も中学が「早稲田実業」だったので、清宮選手のことは以前からウワサに聞いていて、ずっと楽しみにしていたのだが、学校の野球部には属せず、中学硬式の名門・調布シニアの主砲として活躍していた。