錦織圭、頂への挑戦BACK NUMBER

長身+ビッグサーバー=つまんない。
錦織圭の勝負を越えた“テニス観”。 

text by

山口奈緒美

山口奈緒美Naomi Yamaguchi

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photograph byHiroshi Sato

posted2015/04/14 10:40

長身+ビッグサーバー=つまんない。錦織圭の勝負を越えた“テニス観”。<Number Web> photograph by Hiroshi Sato

ハードコートのマスターズ大会では、2度の準優勝の経験もあるイズナー。錦織との身長差はご覧の通り……

乾燥した天候がマイアミでの勝敗を分けた。

 また、イズナーはマイアミでの錦織戦の勝因として「ボールがよく弾んだので、自分に完璧なコンディションだった」と話していたが、逆にそこからも長身選手の弱点がうかがえる。

 今回は、大会使用球の性質に加えてその日の乾いた天候の影響でボールが「よく弾んだ」わけだが、そのおかげで長身のイズナーにとっては、もっともパワーを発揮できる腰から上の位置でいつもボールを打てたという。しかし見方を変えれば、こうした環境条件が重ならない限り、彼らが快適ゾーンでボールをインパクトするのは難しいといえる。

 普通、錦織ほどの技巧派ストローカーなら、とにかくラリーにさえ持ち込めれば分があるのだが、そうはいってもイズナーやカルロビッチのサービスゲームではそれも難しい。ならば、お互いにサービスゲームをキープしあい、タイブレーク勝負に持ち込んでワンチャンスをものにするという展開がもっとも勝利をイメージしやすい。

 実際カルロビッチは、マイアミ・オープン前の今年喫した6敗の全てをタイブレークで落としており、イズナーは6敗中5敗がそのパターンだ。そして、錦織の過去1年間におけるタイブレーク勝率はツアー6位(マイアミ・オープン時)。これらを考えれば、たとえ相手のサービスゲームを全てエースで奪われたとしても、一切気にせずひたすら自分のサーブにだけ集中してタイブレークを狙っていればいいのだが、そんなふうには割り切れないのが錦織の“テニス観”である。

ビッグサーバーとの対戦は集中力が試される。

 コンディション的に不利だった今回のイズナー戦に関しても、錦織は「ブレークするチャンスが見えず、フラストレーションが溜まった」と言っていた。

 昨年のウィンブルドンでケニー・デシェパーという203cmのビッグサーバーと対戦したときも、ストレートで勝ったにもかかわらず「ほんとにつまんない試合だなと思いながらやってました」と語っていた。「自分のゲームは、常にブレークを狙いながらゲームを組み立てていくので、それができないとストレスが溜まるんです」と話しすこともあった。

 リターンからの攻撃にテニスのおもしろさを感じ、ボールのやり取りをすることにこそテニスの楽しさを感じる錦織は、その実感がまったく得られない試合はつまらなくて、時々それが我慢ならないのだろう。おもしろくないな、見ている人もつまらないだろうな、などと思っているうちに気分が落ちたり、集中力が切れたりしてしまう。

 ビッグサーバーとの試合は、特に錦織にとってはそういう意味で常に“我慢”が試されるのだ。

【次ページ】 大型化が進むテニス界で輝く錦織の発想力。

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