錦織圭、頂への挑戦BACK NUMBER

長身+ビッグサーバー=つまんない。
錦織圭の勝負を越えた“テニス観”。 

text by

山口奈緒美

山口奈緒美Naomi Yamaguchi

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photograph byHiroshi Sato

posted2015/04/14 10:40

長身+ビッグサーバー=つまんない。錦織圭の勝負を越えた“テニス観”。<Number Web> photograph by Hiroshi Sato

ハードコートのマスターズ大会では、2度の準優勝の経験もあるイズナー。錦織との身長差はご覧の通り……

大型化が進むテニス界で輝く錦織の発想力。

 しかし、ビッグサーバーと長身はほぼイコールで結ばれるものの、錦織が「長身選手に弱い」という評価はあたらない。

 この「長身」が208cm以上に限られるなら別だが、そんな選手はテニスツアーの歴史上に2人しかいないはずだ。昔の2m以上というのはせいぜい1~2cm超えている程度だった。

 錦織が昨年のウィンブルドンで203cmに勝ったことは先に書いた通りで、同じく203cmでトップ20にいるケビン・アンダーソンには2度の対戦でいずれも勝っている。198cmのマリン・チリッチには昨年の全米オープン決勝で敗れはしたが通算で5勝3敗、196cmのミロシュ・ラオニッチには5勝2敗である。ただ、時代が違えば錦織ももう少し楽だったとはいえるかもしれない。錦織にとって「つまらない」試合が少なくて済んだ、という意味で。

 現在もテニスプレーヤーの長身化は進み、20年前、1995年の今頃にはトップ50の中に195cm以上は4人しかおらず、10年経った2005年でも4人という数は変わらなかったが、今ではそれが11人になり、うち4人が2m以上である。

 190cm以上とそれ未満の選手の割合は、10年前には約1対3の割合だったが、今は2対3。そして、元デビスカップ日本代表で今は海外情報通のテニス解説者としても知られる辻野隆三さんは、「最近は、体の大きい選手でも昔に比べて動きがいいんですよ。以前のほうが、大きい選手の弱点はもっと目立っていました」と指摘する。

 どの時代にも、今の錦織のように170cm台の選手がトップ10内でも活躍していたが、こうした全体の長身化とパワー化、そして大男たちの“進化”を考慮すれば、この時代の小柄な選手がトップで生き抜く難しさは昔をしのぐだろう。しかし、こんな時代だからこそ、錦織のテニス観が生み出すチャレンジングなプレーがいっそう輝くのではないだろうか。

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