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錦織圭が描く2015年の成長戦略を、
初の著書『頂点への道』から読み解く。
posted2015/04/21 11:20
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph by
Mannys Photography of Tokyo
4月21日から、錦織圭のヨーロッパシーズンが始まる。
まずは昨年優勝したATP500カテゴリーのバルセロナ大会。5月に入ってマスターズ1000カテゴリーのマドリード大会、ローマ大会とクレーコートの試合が続き、5月最終週からグランドスラム・全仏オープンに出場する見込みだ。
ハードコートを得意とする錦織にとっては、クレーから芝へと続くヨーロッパシーズンはタフな戦いになることが予想されるが、彼がどう戦っていくかを読み解くのに必携のテキストがこのほど刊行された。
錦織の初めての著書となる『頂点への道』(文藝春秋刊 秋山英宏との共著)だ。自らの筆で2010年からの戦いの軌跡がきわめて率直に書き記され、発売早々大きな反響を呼んでいる。同書からは、昨年初めてクレーコートで活躍を見せた秘密と、それゆえに彼が陥るかも知れない危険を知るヒントが読み解けるのだ。
昨年のバルセロナで開花した新スタイル。
昨年、クレーコートでの初優勝を飾ったバルセロナ大会について、錦織はこのように綴っている。
「自分がクレーでどういうプレーをすればいいのかが明確になっていました。いつもより、クレーということを意識しないこと。ザ・クレーコーターのプレーをするのではなく、自分がハードコートでやってきたテニスを少しマイナーチェンジして、クレーでのプレーに合わせることでした」
球脚の遅いクレーコートでは、ストローク戦でウィナーを奪うことが簡単ではない。ラファエル・ナダルやダビド・フェレールらのスペイン勢を代表とする「ザ・クレーコーター」たちは、恐るべき粘り強さで球を拾い続け、敵の体力を削り取っていく。
一昨年まではその対応策をまだ模索していた錦織だが、昨年のクレーシーズンではクレーに合わせ過ぎようとせずに自身の戦い方を押し出して、素早い展開力で勝負することができるようになっていた。
これは、全仏オープンを史上最年少で制した経験があるマイケル・チャンコーチが与えた指導と自信も大きくものをいったはずだ。