錦織圭、頂への挑戦BACK NUMBER
長身+ビッグサーバー=つまんない。
錦織圭の勝負を越えた“テニス観”。
posted2015/04/14 10:40
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph by
Hiroshi Sato
インディアンウェルズに続く今季2つ目のマスターズシリーズ「マイアミ・オープン」は、また王者ノバク・ジョコビッチの優勝で幕を下ろした。順当ならそのジョコビッチに準決勝で挑むはずだった錦織圭だが、結局そこにはたどり着けず仕舞いに。文字通り行く手を遮ったのは、上背208cmのジョン・イズナー。世界ランク24位、アメリカの29歳であった。
その長身から繰り出すサーブを最大の武器とするイズナーは、サービスエースの年間記録で2010年と2012年の2度トップに輝いている。208cmの人間はその高さにふさわしい長さの手を持つわけで、それをいっぱいに伸ばして前傾しながらサーブを打てば、足はベースラインを出ていなくても打点はずっと前方になる。そこから叩きつけられる平均時速220~230kmのサーブは、錦織が言ったようにまさに「ありえないところからボールがくる感じ」に違いない。
たとえビッグサーバーが相手でも、多くのケースでは試合が進むにつれてそのコースや癖が読めてくる錦織だが、初対戦だったイズナーのサーブは最後まで全く読めなかったという。
身長2m超のビッグサーバーには弱点も多い。
テニス界の大男といえば、このイズナーのほかに、 211cmのイボ・カルロビッチが思い浮かぶが、錦織はこのカルロビッチにも負け越している。最初に2連敗して、昨年のメンフィス大会の決勝で初勝利という経緯での1勝2敗。2度目の敗戦は錦織の途中棄権だったが、初対戦となった日本開催のデビスカップでの敗戦は衝撃的だった。超高速サーブにまったく歯が立たず、錦織はすっかりリズムを失った。178cmの錦織が立つコートとカルロビッチが立つコートは、ネットをはさんでその面積が恐ろしく違って見えたものだ。
しかし、その圧倒的なサーブ力、リーチの利をもってしても、カルロビッチの自己最高位が14位にすぎず、グランドスラムでもデビューから12年の間、ほとんど3回戦までに負けていることからもわかるように、テニスは背が高ければいいというものではない。
2mを超える選手は'80年代からちらほらいて、現在までのトップ100経験者の中に少なくとも9人を見つけることができたが、そのうちトップ10に入ったのは、2012年に9位までいったイズナーと、'90年代にやはり9位だったスイスのマルク・ロセの2人しかいない。これほど長身だと、足が遅いとか、ネットプレーが苦手だとか、バウンドの低いボールの処理が下手といった欠点があるものなのだ。