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アギーレ解任、協会を評価する理由。
穏便な契約解除には意外な利点が。 

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二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2015/02/06 11:30

アギーレ解任、協会を評価する理由。穏便な契約解除には意外な利点が。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

アジアカップを終え、休養のために帰国していた時期に契約解除の発表となった。選手たちからの評価は高かっただけに期待感はあったが……。

アギーレが主張した「仕事をする権利」。

 12月27日の記者会見では、真実が明らかになるまで身を引く考えはないのか、という質問に対して彼は「仕事をする権利」を主張している。

「(八百長疑惑のある試合に)かかわった選手たちは毎週、通常どおり戦っている。サラゴサの幹部も今までどおり幹部としての仕事を続けている。その試合のレフェリーも、今でも笛を吹いている。なぜ彼らと同じように私も仕事を続けることができないのか。

 有罪を証明されるまでは何人たりとも無罪だと思うので、それまで仕事をする権利がある。推定無罪というのは法によって定められている。有罪が証明されるまでは無罪だ」

 受理→起訴に至ろうとも、裁判でシロクロはっきり出るまでは己の仕事をまっとうしたいという明確な意思表示だった。

 日本協会は難しい選択を迫られたわけである。

 推定無罪の原則から言ってもアギーレの主張は理解しなければならないし、しかしその一方で疑惑のかかったグレー状態が続いてしまえば強化への影響ばかりでなく、日本代表のクリーンなイメージが損なわれる怖れがある。ファン、サポーター、スポンサー、周囲への配慮も考えなければならない。結論を先延ばしにした末に「クロ」になってしまえば、大きなダメージをこうむることになる。

 そこで出した協会の結論が、告発受理の段階での契約解除だった。

アギーレの必死の采配は、優勝への焦りだったか。

 一番は、6月から始まるロシアW杯アジア予選が迫っているという事情。受理されれば当事者の一人であるアギーレ自身も事情聴取に応じなければならず、代表の活動に多少なりとも影響が出ることが考えられた。大仁会長も「リスクを排除することが必須」とコメントしている。

 ただ、不起訴になれば八百長疑惑は収束に向かい、支障をきたすこともなくなる。それを待たずに起訴されるかどうかの前段階で穏便に契約解除に至ったということは、協会とアギーレが話し合いを積み重ねてきたと考えるのが普通だ。

「仕事をする権利」を主張するアギーレと、受理の段階で円満的な解任に踏み切りたい協会サイドでは、少なくとも隔たりはあったはず。指揮官の理解を得る、納得を得るにはある程度の時間がやはり必要だったのではあるまいか。

 アジアカップでメンバーを固定して勝負に出たアギーレの必死さは、優勝への焦りとも見てとれた。良い内容で、強い形で優勝すれば“待った”をかけられるとも考えていたのかもしれない。だがベスト8で終わり、八百長疑惑の影響がチームになかったとは結果的に言い切れなくなった。告発が受理されたことでアギーレのなかでも覚悟ができたのではないかと思うのだ。

【次ページ】 指揮官と協会で交わされた“大人の対応”。

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