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アギーレ解任、協会を評価する理由。
穏便な契約解除には意外な利点が。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2015/02/06 11:30
アジアカップを終え、休養のために帰国していた時期に契約解除の発表となった。選手たちからの評価は高かっただけに期待感はあったが……。
指揮官と協会で交わされた“大人の対応”。
大仁会長の声明で、以下の3つに注目してみたい。
「JFAとしてはこれまで繰り返しご説明している通り、アギーレ監督が八百長へ関与したという事実を確認しておらず、八百長に関与したという事実をもって契約解除の理由とするものではありません」
「アギーレ監督には自らの名誉を守り、無実を証明するために刑事手続きに集中していただきたいと考えております」
「アギーレ監督の指導力に関しましては、AFCアジアカップ連覇は叶わなかったものの、次のFIFAワールドカップ・ロシア大会を見据えた強化が順調に進んでおり、その手腕を高く評価しています」
これらの発言には、アギーレに対する協会側の最大限の配慮が見てとれる。
個人的にはアジアカップのベスト8が決断の最終的な後押しになったと思っているが、その点は触れられていない。「受理」で解任をのむという指揮官の“大人の対応”に、協会側も“大人の対応”でアギーレに傷がつかないように注意を払っているように感じられてならなかった。
円満な契約解除は、後任選びにもプラス効果が。
契約解除に伴う違約金は発生しないという。
表面上であっても、円満に契約解除に至ったことのメリットは小さくない。次期監督の選考に関しても、その影響を最小限に食い止めたのではあるまいか。
もし告発の時点でクビを切って訴訟問題などに発展してしまったら、世界はどのように日本サッカーを見るだろうか。監督の人権軽視に映ってしまえば、イメージは当然悪くなる。世界で活躍する監督を招聘すべく交渉しようにも、違う難しさが発生してくることも考えられるからだ。
もちろん協会の対応すべてを評価するつもりもない。しかしながら、前代未聞の事態に際して考えられるいくつかのケースを想定すれば、決して悪い結末ではなかったと言えるのではあるまいか。