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アギーレ解任、協会を評価する理由。
穏便な契約解除には意外な利点が。
posted2015/02/06 11:30
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Takuya Sugiyama
2月3日、午後だった。
知人から「日本サッカー協会から、ハビエル・アギーレ監督に関する会見の知らせが来ている」との一報を聞いた。急に設定された記者会見で、リリースを確認してみると出席者に大仁邦彌会長の名前がある。会見の内容については詳しく触れていないが、解任か、休養かいずれかの選択だと直感的に思った。
結論は、アギーレ監督との契約解除、つまり「解任」だった。バレンシア裁判所が八百長疑惑に関する検察当局の告発を受理したことの確認がその前夜に取れたため、決断したという次第だ。
受理の確認が取れた段階での解任は、ほぼ決定事項だったと思う。
アジアカップ期間中の1月14日にマルカ紙などが受理を報じたことを受けて、翌日に大仁会長は「アジアカップが終わりましたら、この告発が受理されたことについて協会の考え、対応を説明いたします」とコメントしている。受理は公表されないために確認に時間が掛かってしまったが、解任ないしは休養の決断を下すニュアンスが含まれているように感じ取ることができた。
アギーレを納得させ、穏便に進んだことは評価できる。
ただ「ほぼ決定事項」と書いたのは、アジアカップの成績が多少なりとも影響するのではないかと思ったからだ。たとえば優勝してアギーレの評価がグンと上がって世論の風向きが変わった場合、「受理」で判断を下すのではなく「起訴」まで先延ばしにする可能性もゼロとは言い切れなかった。だが結果的に5大会ぶりのベスト8止まりに終わったことで、契約を解除するにはここしかないタイミングだったと言える。
協会の対応については意見が分かれるところだが、筆者個人の意見としては良かったと考えている。
それは、アギーレを納得させた穏便な契約解除、ということに尽きる。
昨年9月にスペイン紙で八百長疑惑が報じられ、12月に検察当局が関係者41人を告発した。この時点で解任すべきだったという声もあるが、受理もされていない段階でクビを切ってしまえば身の潔白を訴えるアギーレから訴訟を起こされる可能性があったのだ。