ブンデスリーガ蹴球白書BACK NUMBER
「一生懸命やるだけの時期は過ぎた」
内田篤人の試合中の“思考”を辿る。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2014/12/12 10:50
CLグループリーグ突破を決め、内田篤人はファンに最高の笑顔を見せた。指示よりも結果、目先の評価よりも長期の視点……内田の思考法は他の誰とも似ていない。
内田の狙い通り、右サイドの裏から先制点が。
失点しないことを第一に考えながら、攻撃では監督の求める役割を全うすること、攻撃的なポジションの選手たちに合わせることにフォーカスしていた。ディマッテオ監督がウイングバックに求めるのは、自分たちがボールを持って攻撃をするときに、高い位置でタッチライン際にポジションをとってスタートすること。そこからは、細かいことは言われない。タッチライン際に開いていれば、自然と中にいる選手たちの動きも視界に入ってきやすい。
「今日はオレがマルコ(へーガー)とチョウポを見て、あいつらが裏に抜けるならオレが足元で受ける。あいつらが足元で受けにいくなら、オレが裏に抜ける。かぶらないようにしているだけ。オレが動くというよりは、みんなの動きを見て、空いたところにオレが顔を出す感じかな」
監督が求める攻撃の際のシンプルな役割をこなす中で、内田はあることを感じていた。シャルケから見た右サイドの裏のスペースに対する、マリボルのケアが甘かったということだ。
「後半はけっこう空いていたでしょう? それに、(味方の選手が)あそこに流れてきていたから。相手にひっかからないように、上手く使ってあげればいいだろうなと思って」
後半17分、右の高い位置でボールを受けた内田は間髪入れずに、短いパスを前におくった。これを受けたヘーガーが放り込んだクロスは相手GKに触れられたが、ボールがこぼれる。素早く反応したマイヤーが冷静に蹴り込んで、シャルケが先制を果たした。
監督の指示を“破り”、5バックで中央を固める判断。
この1点をしっかり守りきれば、この試合に限っていえば内容は二の次だ。シャルケは攻撃時は3バックだが、守備では4バックへと移行するように言われており、それが5バックになるようでは狙いとはことなる。ただ、内田は監督の求める守備の形を追求することよりも、監督がのどから手が出るほど欲しいと願っていた勝利をつかむために最適な方法を考えていた。それは内田にとっては、ごく当たり前の発想だった。
「もちろん、最初は5バックになるつもりはなかったけど、点が入って相手も大きい選手を前にいれて、こぼれ球が来るとなると、やっぱり(中央に)密集していたほうがいいから。
5バックでも7人で守っても、ゴール前を固めて守って1-0で終われれば。そこら辺は、判断と経験ということだと思いますけどね。監督の指示を待って、じゃあ守ろうということではないし。『臨機応変』に、と言ったらアレだけど……」