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「一生懸命やるだけの時期は過ぎた」
内田篤人の試合中の“思考”を辿る。 

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ミムラユウスケ

ミムラユウスケYusuke Mimura

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posted2014/12/12 10:50

「一生懸命やるだけの時期は過ぎた」内田篤人の試合中の“思考”を辿る。<Number Web> photograph by AFLO

CLグループリーグ突破を決め、内田篤人はファンに最高の笑顔を見せた。指示よりも結果、目先の評価よりも長期の視点……内田の思考法は他の誰とも似ていない。

試合3日前にあった、監督との会話。

 残り10分を切ったあたりからは、攻撃の選手たちも無理にシュートを狙いにいくことはなく、サイドにボールを回してゆっくりと時間を使うシーンが増えた。監督は守備に強い選手たちを順番にピッチに送り込み、そのまま逃げ切りを決めて1-0で勝利を収めた。

 チェルシーがスポルティングを3-1で下したため、シャルケは内田が加入する前の'07-'08シーズンから数えると、出場した5大会連続での決勝トーナメント進出を決めた。内田にとっては4度目となるグループステージの突破だった。

「ここからだからねぇ、CLはねぇ」

 試合後の内田は、急に思い出したように、陽気にそう語った。

 この試合の3日前、内田はディマッテオ監督に呼び出された。「なにか、悪いことでもしたのかな。記憶にないな」そう思い監督のもとへ向かうと、こう言われた。

「今日の練習は休みなさい。水曜日のCLを100%の状態で戦うことが何より大切なのだから」

 さらに「おまえは足が痛かったとしても休むと言わないことは知っているぞ」とも付け加えられた。自分がすぐに弱音を吐くタイプではないことを10月に就任した指揮官が知っていることも、このとき確認出来た。

「(試合に出られないような怪我をすれば)周りに迷惑をかける。現に、いまのチームを見ると、オレのところの選手がいないじゃん? だから……。(昨シーズンは)迷惑をかけたし、それに試合には出たいしね」

「では、そうさせてもらいます」と答えた内田は、クラブハウスでゆっくりマッサージを終えただけで、その日は家路についた。

 そんな監督とのやりとりを終えて思い出したのは、鹿島アントラーズでプレーしていた時期のことだった。

「1回だけ『おまえは次の試合のことを(考えて)やっているのか?』と言われたことがあったなぁ」

「“一生懸命やるだけ”の時期は個人的に過ぎた」

 怪我で試合や練習を休むなんてダセェ。

 内田はずっとそう思い続けてきた。監督から休むように促されても、かつての内田ならばあまり耳を貸さなかったはずだ。

 でも、今は違う。

「前はやっぱり、監督に信頼して欲しいというのもあったし、指示をしっかり守らないといけないという考えもあった。でも、今はある程度は試合にも出させてもらっているし……。抑えることができるときは抑えて、怪我をせずに、というね。“一生懸命やるだけ”という時期は個人的には過ぎた感じはある」

【次ページ】 「勝つこと、勝つこと!」

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