フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
フィギュア日本女子がロシア杯優勝。
Jr王者・本郷理華は勝負強い18歳。
posted2014/11/17 16:30
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph by
AP/AFLO
GPシリーズ第4戦目、ロステレコム杯は11月14日からモスクワで開催。過去3試合はロシア女子がタイトルを独占してきた中で、ロシアの連勝を阻んだのは日本の18歳、全日本ジュニアチャンピオンの本郷理華だった。
SP2位から、逆転優勝。
本郷はシニアデビューである今シーズン、初戦のアジア杯で優勝し、フィンランディア杯では3位と良いスタートをきっていた。シニアGPシリーズデビュー戦となったスケートカナダでは、5位。そして2戦目のこの大会で、みごとタイトルを手にした。
SP「海賊」では、3+3のトウループコンビネーションをきめて2位スタートに。これはおそらく本人にとっても、予想以上の結果だっただろう。だがプレッシャーに押しつぶされずに、フリーでも伸び伸びとした演技を見せた。
「カルメン」は彼女のはっきりした端正な顔立ちにぴったりの雰囲気のプログラムで、大きなミスなく演技を終了すると思わずガッツポーズが出た。5コンポーネンツも11人中もっとも高い評価を受けたことは、大きな自信になっただろう。演技後、「今もっているものを全て出し切れた」と笑顔を見せた。
チャンスを見事にものにした18歳。
最終結果が出ると、本人が「優勝しちゃった。本当?」とつぶやいたと言うが、確かにこの大会で彼女は、優勝候補とはみなされていなかった。
当初出場が予定されていたソチ五輪チャンピオン、アデリナ・ソトニコワが足首の怪我のため欠場。2週間前にスケートカナダで1位となったアンナ・ポゴリラヤが優勝候補で、2位、3位は誰がとってもおかしくないという顔ぶれだった。だがポゴリラヤは地元開催のプレッシャーもあったのか、ジャンプが絶不調だった。
本郷はそのチャンスを逃さずに、落ち着いて自分の滑りを見せて優勝を手にした。まだ18歳ながら、ライバルの本拠地で最後まで臆することなく演じきった彼女には、競技者としての骨太の強さが感じられた。
「自分にもっと必要なものは何なのか、先生とよく話し合い分析してきた。その結果が出せたのだと思う」
そうコメントした本郷が師事するのは、荒川静香と本田武史に基礎技術を叩き込み、鈴木明子を世界の表彰台へと導いた長久保裕コーチである。ジャンプを教える技術に関しては世界一とも評されているベテランコーチだが、NBCの解説をつとめるタラ・リピンスキーは、本郷のジャンプは高さがあり、質も良いと絶賛した。ここでの初優勝は、彼女にとって今後の大きな飛躍につながることだろう。