今日も世界は走っているBACK NUMBER
データで読み解く日本陸上の現在地。
アジア大会で露呈した世界との差。
posted2014/10/10 10:30
text by
金哲彦Tetsuhiko Kin
photograph by
Tetsuhiko Kin
わずか13秒差と1秒差。
2014仁川アジア大会のマラソン競技は、男女とも僅差でバーレーン勢に金メダルを攫われた。実に悔しい。
負けたのは中東のバーレーン人ではない。どちらもケニアから国籍を移した選手だ。彼らはバーレーンには実際には住んでおらず、国籍だけ移して母国ケニアでトレーニングしていると思われる。
アジア大会期間中、さらなるビッグニュースが飛び込んできた。
ベルリンマラソンでついに2時間2分台がでたのだ。2時間2分57秒で42.195キロを走り抜けたのは、またしてもケニアのデニス・キメット。もはや日本選手には手も足も出ないレベルだ。
身体能力が高く、かつどん欲なハングリー精神をもった選手が山ほどいる長距離王国ケニア。起死回生をはかろうと必死にもがいている日本マラソン界に、ケニアの壁が大きく立ちはだかっている。
4人の日本人マラソン選手は健闘したが……。
今回のアジア大会では、金メダルをとれば来年北京で開催される世界陸上にいち早く内定するというルールがあった。その北京で日本人最上位で8位に入賞すれば、リオ五輪に内定する。頑張ればとれそうなアジア大会での金メダルに、モチベーションが高まるのは当然だ。しかし、簡単には取らせてくれない。
さて、男女のマラソンレースを振り返ってみても、日本の代表4選手、松村康平(三菱重工長崎)、川内優輝(埼玉県庁)、木崎良子(ダイハツ)、早川英里(TOTO)のレース内容に問題はなかった。
問題があるどころか、それぞれの持ち味を生かした立派なレース展開だったと思う。
オリンピック選考に際し陸連がよく使う「タイムとレース内容」という二つの基準で言えば、タイムはさておき、十分すぎるほどの「レース内容」だった。
しかし、勝てなかった。勝負はそう甘くないのである。