ブンデスリーガ蹴球白書BACK NUMBER
“シンジ対決”での主役は岡崎!
香川の復調、丸岡初陣にも煌めきが。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byBongarts/Getty Images
posted2014/09/21 15:00
試合終了直後にユニフォームの交換をした岡崎と香川。「序盤のチャンスさえ決めていれば、こちらの試合だった」とポジティブなコメントを残した香川。
岡崎をさらに進化させた、新たなシューズとは?
昨シーズンの岡崎はゴールだけに特化することで、15ゴールを決めた。今シーズンはチーム事情もあり、センターフォワードとしてのポストプレーも昨シーズンとは比べものにならないほどしっかりとこなさないといけない。もちろん、相手チームの選手にかみついていくようなディフェンスも健在だ。
それなのに、驚異的なペースでゴールを記録している。今シーズンの公式戦7試合のうち5試合で、計6ゴールを決めているのだ。リーグ戦に限れば、4試合で4ゴール。現在、リーグ得点ランキングトップに立っている。
この試合ではチームトップタイのスプリント数を記録したこともあり、「最後は本当にバテてましたよ(笑)」
ADVERTISEMENT
岡崎はそう言って苦笑するが、走って、身体を張って、そしてゴールを決めた。それほど激しいプレーを続けられた理由は、どこにあったのか。
岡崎が試合後に見せてくれたのは、ミズノ製の黄色スパイクの裏側だった。プラスチックのスタッド(地面に刺さる突起の部分)を指で示しながら、岡崎が口を開いた。
「今シーズンから、取り換え式を使わないようにしているんです」
スパイクには大まかにいうと、スタッドの先に金属がついていて取り外して長さを変えることのできる「取替式」と、靴と一体化しているプラスチックのスタッドで取り換えることが出来ない「固定式」との2種類ある。
「取替式」のスパイクはスタッドの長さを調整できるので踏ん張りがききやすいが、その分だけ怪我を誘発するような足への負担や疲労を微妙にもたらすという。「固定式」の場合は、靴と一体化しているために足への負担は少ないものの、一般的には踏ん張りづらく、滑りやすくなってしまうと言われている。
ちなみにヨーロッパのピッチは日本のそれと比べると柔らかく、足を滑らせやすい。そして、この試合では途中から雨も降っていた。足を滑らせやすい条件はそろっていたのだ。にもかかわらず、岡崎は「固定式」のスパイクで90分走り回って、滑ることがほとんどなかった。
「雨が降っていても、あまり滑らなくなったんですよね。だから、慌てないでやれる。もちろん、サイドでプレーするときには、こういう(横にゆさぶる)動きがあるので滑ることもあるかもしれない。でも、トップだとそういう動きもあまり入れないので大丈夫ですね。今はクラブでは1トップでやろうと決めているし、その上でクオリティを上げていこうという意識でやれているんですよ」
ブンデスリーガに来て100試合。その積み重ねが、さらに踏ん張る力にもつながった。スタッドひとつにこだわるという話も、地味なことに聞こえるかもしれない。しかし、そうした努力の積み重ねがあるからこそ、これまで以上の質とパワーを持って90分間走り回ることが出来るようになったのだ。
「ゴールは確かに決めていますけど、続けることが大事ですからね。これで終わったら意味ないし。次は火曜日。フランクフルトとのダービーですからね。頑張ります!」
岡崎はそう言って、意気揚々とロッカールームへと引き上げていった。
ブンデスリーガで100試合を戦ってきた経験と、チームの浮沈のカギを担う責任の重みに十分に耐えられるくらいのたくましい背中がそこには見えていた。