ドルトムントが優勢に試合を進めていたはずだが……。

　香川はボールタッチにキレを見せるものの、引いた相手を前に速攻以外ではなかなかチャンスを作れない。

「後半はちょっと落ちましたけど、コンディションは上がってきていると思います。今日は、（ボールタッチも）感覚的には良かったので。それを継続してやりたかったですけど、やっぱり、相手もすごく守備が固かったですし。そういう意味ではなかなか難しかったですね」

　試合後にはそのように振り返っている。

　岡崎は、この日のチームの守備が上手くはまった理由をこう分析する。

「僕らは守備のときに選手と選手の間を閉じていて、それでスルーパスを出させないようにしていたんですよね」

　それでも、ドルトムントが優勢に試合を進めていたことに変わりはない。40分には中央で受けた香川が素早く右サイドに展開。これを受けたピシュチェクがクロスを送り、ゴール前に入ったラモスが合わせたがシュートは右ポストにはじかれてしまう。

　こうして、両チームともに得点のないまま後半を迎える。

今季、岡崎が磨き上げてきたポストプレーとは？

　後半8分にはグロスクロイツのクロスにフリーでラモスが合わせたにもかかわらず、ディフェンダーにブロックされてしまった。

　ここからマインツは少しずつ攻撃の糸口をつかんでいく。起点となっていたのはセンターフォワードらしくなってきた岡崎だ。

　後半10分には中央でディフェンダーを背負って受けると、そこから前を向いて右サイドに大きな展開を見せる。アラギがこれに追いつき、後方からフォローに来ていたバウムガルトリンガーへ。そこからクロスが入ると、岡崎がゴール前に飛び込む。ヘディングシュートは枠を捉えることこそ出来なかったが、圧巻だったのは映像では捉えていなかったポストプレーからの展開である。

「チョウポ（・モティンク／シャルケ）やニコライ（・ミュラー／ハンブルガーSV）がいなくなって、今はみんなで崩さないといけないじゃない。そうなると、オレが中盤に下りるか、前線でロングボールを受けてキープするかしかないのですが、なかなか……」

　開幕直後に岡崎は、ポストプレーを改善しないといけないと悩んでいたが、この後半10分のシーンを筆頭にこの試合では前線でしっかりとボールを収めることが出来ていた。その理由の一つは、前半8分のプレーにヒントがあると岡崎は考えている。

【次ページ】　岡崎が仕掛けていた、密かなプレッシャー。