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“シンジ対決”での主役は岡崎!
香川の復調、丸岡初陣にも煌めきが。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byBongarts/Getty Images
posted2014/09/21 15:00
試合終了直後にユニフォームの交換をした岡崎と香川。「序盤のチャンスさえ決めていれば、こちらの試合だった」とポジティブなコメントを残した香川。
岡崎が仕掛けていた、密かなプレッシャー。
「今日は相手が(プレッシャーをかけに)こなかったのもあったと思います。あとは、最初の時間帯の自分の突破もあって、(相手センターバックの)ギンターなどが消極的なプレーになったのかな。本来ならガツガツ来るようなタイプだと思うんですけど、自分がガツガツ行くことによって、相手に威圧感、プレッシャーをかけられたのかなと思います」
少しずつマインツが反撃に転じていくなか、後半19分に香川はムヒタリアンと交代でピッチを後にすることになった。同時にインモービレもラモスと交代でピッチに入る。これに伴い、オーバメヤンが2トップの一角に入る。火曜日のアーセナル戦と同じ2トップにして、ドルトムントはゴールを目指してきたのだ。
しかし、その狙いをマインツが打ち砕く。
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相手CKから展開されたクロスをGKカリウスがキャッチすると、途中から入ってきた右FWのハイロにボールを送った。しかし、相手の戻りも早い。ハイロは、一度は突破をあきらめ、後方のモリッツへ戻した。これで流れが切れるかと思われたが、モリッツ、ブロシンスキとつながり、そこから右サイドの裏へパスが出る。これを受けたハイロがドリブルで強引に突破して、クロスを入れた。ニアサイドにはドルトムントのギンターが入っていたが、岡崎がその前に身体を入れて、軽く触ったボールがゴールネットを揺らしたのだ。
岡崎を活かすため、思い切った選手補強をしたマインツ。
ハイロが後方にボールを戻した時点で、マインツの攻撃はスピードダウンした。これで岡崎はゴール前に入るタイミングを測り直さなくてはいけなくなった。にもかかわらず、最後は絶好のタイミングでゴールに入れたのは何故だったのだろうか。
「僕はいつも『後悔したくないな』という思いで走っているだけです。これで(ゴール前に)行かなくて、あいつが突破したときには……と考えて。今までは(クロスボールがなかなか)来なかったんですけど、そこで諦めなかったことが結局、点につながった。そういうことがやっぱり大事なのかなぁと思います」
この言葉には解説が必要だろう。シーズン序盤から岡崎はもっとシンプルにクロスをあげてくれるよう、チームメイトに何度も要求していた。実際、ヒュルマンド新監督もサイドからの崩しを求めていたのだが、機能しなかったのだ。
その理由の一つは、サイドを専門とする攻撃的なポジションの選手がいなかったからだ。そこで、マインツは9月1日の移籍期限間際に、この試合で先発したアラギとホフマン、そして岡崎のゴールをアシストしたハイロと、そのポジションの選手を3人も補強したのだ。岡崎のあきらめない気持ちに加えて、彼らの加入がチームの底上げにつながった。
ところが、喜んだのもつかのまだった。攻撃だけでなく、守備でも走りまわっていた岡崎が、後半24分にペナルティエリア内でハンドをとられ、PKを与えてしまう。しかし、インモービレの蹴ったPKはカリウスが完璧にブロック。これでまた、マインツに勢いが出る。