サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
動きすぎず、しかし得点機は大胆に。
柴崎岳が小笠原満男から学んだこと。
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byTakuya Sugiyama
posted2014/09/15 10:50
運動量を誇示するわけではなく、しかし大事なところにいる柴崎岳。「遠藤の後継者」という肩書きが取れたときが、彼が本当に代表の主力になった時なのかもしれない。
動きの量は少なくとも、得点の匂いには敏感。
しかし、高校時代から柴崎を取材してきた記者に話を聞くと、柴崎のウィークポイントとして「動かない」ことを挙げる人たちもいた。確かに、その名古屋戦で柴崎がもっと前線に顔を出していれば、さらに得点が動いた可能性もある。しかし、逆にピンチを招いた可能性もある。ただひとつ言えることは、得点の匂いをしっかりと嗅ぎつけることができたからこそ、決勝点を決められたということだ。
2012年2月には初めてA代表へ選出。国内組で構成されたアイスランド戦だったが、Jリーグ出場13試合のルーキー柴崎に、出番は回ってこなかった。
2年目には鹿島でもレギュラーに定着し、ナビスコカップ2連覇に貢献。ベストヤングプレーヤー賞を受賞し、名門クラブの若きエースとして順調なステップを歩んできた。それでも、日の丸との縁は薄かった。U-17W杯には出場したものの、ロンドン五輪を戦うチームでは候補止まり。若手選手で挑んだ2013年東アジア選手権では、メンバー入りを果たすも大会直前に体調不良で辞退している。
小笠原満男の隣で、柴崎が学んだ「量より質」。
鹿島では、小笠原満男とボランチでコンビを組んだ。次代を担う中盤の名手として大きな期待を集める柴崎だったが、ピッチ上の主導権は経験豊富な小笠原が握っていた。バランスをとることに終始し、小笠原の陰に隠れてしまう試合もあった。
しかし、Jリーグで積み重ねてきた時間は貴重なものだったはずだ。もともと攻撃的なセンスに秀でる柴崎が、同タイプの小笠原の隣で学んだものは少なくないだろう。走る量よりも、その質が重要であることを実感したに違いない。
そして今シーズン序盤、世代交代真っ只中の鹿島は苦しんでいた。天皇杯やナビスコカップでは早期敗退したが、若手が徐々にチームとしてまとまりを見せ、リーグ戦では優勝の可能性を残す順位にいる。そんな若きチームを牽引するのが柴崎だ。小笠原の後継者と言われた男は、気づけばチームのリーダーへと成長していた。過去3シーズンで3点だった得点も今季はすでに5得点(9月11日現在)。そして、攻撃を操るパスの技術には、さらに磨きがかかっている。自信と結果が相乗効果をもたらし、さらに柴崎を輝かせている。