甲子園の風BACK NUMBER
関東優位の流れに近畿は抗えるか。
順調な大阪桐蔭と不穏な龍谷大平安。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2014/08/04 10:50
2年生だった昨夏も出場し、打率は4割を超える活躍を見せた香月一也。
近畿の主役はやはり3年連続の大阪桐蔭。
この中で、地区を牽引するリーダー的存在になるのは大阪桐蔭だろう。PL学園が桑田真澄、清原和博のKKコンビを擁して'83~'85年に甲子園に出場して以来、大阪では29年ぶりとなる3連覇である。溝田悠人、永谷暢章という全国屈指の2人エースを抱える履正社が選抜で準優勝に輝いたこともあり前評判は高かったが、フタを開けて見れば大阪桐蔭の圧勝だった。
アキレス腱は投手陣、というのがマスコミで囁かれた大阪桐蔭評だ。しかし、大阪大会5回戦の箕面東戦を見た印象では、先発した福島孝輔がスリークォーターから力強いストレートを投げ、「アキレス腱」というほどの弱さは感じなかった。
球種の中で印象に残ったのはストレートとスライダーで、雑誌などで紹介されるシンカー、チェンジアップはほとんど投げていなかった。スリークォーターという形は変則だが、投球の内容はオーソドックスの本格派。さらに9番打者でありながら力強いプルヒッティングで目立つところなどは、さすがに大阪桐蔭のエースである。
スーパー2年生と、それを上回る上級生の迫力。
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打線は2番峯本匠(二塁手)、3番香月一也(三塁手)、6番森晋之介(中堅手)が昨年からの主力で、ここに3年になってからレギュラーに座る4番正随(しょうずい)優弥(外野手)、7番横井佑弥(捕手)が加わり、毎年スターティングメンバーに名を連ねる下級生は今年も5番青柳昴樹(2年)、8番福田光輝(2年)と2人入る。
関西のライターに「福田の印象はどうでした?」と聞かれたので、「どうして?」と返すと、「中学のとき争奪戦が演じられた選手なんですよ」と言われ「へえ~」とひとしきり驚いたあと、「でもそんなに目立たなかったよ」と言った。それは福田の実力云々でなく、大阪桐蔭主力打者の迫力がスーパー2年生を上回ったからに他ならない。
とくに私が注目したのが香月だ。試合後、西谷浩一監督に「香月、いいですね」と話を振ると、「今年の中では唯一のプロ志望なんですよ」と言う。それを聞いて「なるほど」と思ったのは、プロで成功する最低条件「形のよさ」が香月に備わっていたからだ。
第1打席では左腕投手の内角いっぱいに投じられた縦割れのスライダーを十分呼び込んでライト前に運んで三塁走者を迎え入れているが、このコースの球は打ってもファールになるのが普通である。形のよさがもたらしたタイムリーと言っていい。