甲子園の風BACK NUMBER
関東優位の流れに近畿は抗えるか。
順調な大阪桐蔭と不穏な龍谷大平安。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2014/08/04 10:50
2年生だった昨夏も出場し、打率は4割を超える活躍を見せた香月一也。
緊張感を欠いた春の覇者・龍谷大平安。
大阪桐蔭は順調にきているなと納得したが、よくなかったのは春の覇者・龍谷大平安だ。京都大会準決勝からは緊張感がまったく感じられなかった。
4回表、1死一塁の場面ではこんな守備があった。東山の1番打者が放ったショートライナーを石川拓弥(3年)が正面でキャッチしながらこれを落球し、6-4-3の併殺を完成させたかに見えたが、審判はこれを故意落球と判断、2死一塁からゲームを再開させた。
こういうプレーは龍谷大平安の十八番だが、緊張感のある中で行なわれてこそ光るプレーで、全体的にダレ気味の中で行われれば目立ちたがり屋のスタンドプレーにしか見えない。原田英彦監督は優勝を決めた瞬間、歓喜の輪を作らなかったという。「自分たちのプレーが出来ていなかったから」というのがその理由である。そういう自覚がせめてもの救いだと思った。
春に続いて近畿勢は期待できる要素が揃っている。
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この両校に次いで近畿の期待を担う智弁学園には超高校級スラッガーの岡本和真(3年)がいる。選抜では1回戦の三重戦で第1、3打席にセンター、レフトにホームランを打ち分け、長距離砲としての素質の高さを遺憾なく発揮した。この夏の奈良大会でも打率.556、本塁打3、打点14と打ちまくり、とくに決勝の天理戦で2ランを放つなど、大舞台での勝負強さが際立つ。
甲子園大会の観客動員は地元近畿勢の活躍で左右される。甲子園大会が華々しいものになるか、閑古鳥が鳴きかねない寂しいものになるかはひとえに近畿勢の勝敗にかかっている。春に続いて期待できる要素が揃っているので、私は楽しみにしている。