ブラジルW杯通信BACK NUMBER
硬直した采配と残酷なベンチ風景。
ギリシャ戦、なぜ交代枠を残したのか。
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byTakuya Sugiyama
posted2014/06/20 12:40
必勝を期して挑んだ第2戦、手にしたのは失望の勝ち点1だった。「優勝を目指す」そう公言して臨んだW杯を、こんな形で終わらせるわけにはいかない。
相手が10人になって、逆に苦しくなった。
しかし、相手が10人になったことで、日本は逆に苦しくなっていく。
ハーフタイムで遠藤保仁と交代し、後半の45分間をベンチから見ていた長谷部誠の目には「11対11だったときの方が日本はチャンスを作れていた。10人になって完全に相手が守りを固めてきたことで、余計に難しくなった」と映った。
後半12分、大迫に代えて香川真司を入れ、打開策を探ろうとするものの、攻撃に変化が出ない。
2戦続けてパワープレーに出たザックの采配。
この日最大のチャンスが訪れたのは後半23分。中央の香川が、右サイドのスペースへ走り込んだ内田にパス。内田のクロスを逆サイドの大久保がフリーで受けて左足シュートを打ったが、ボールは大きく枠を外れていった。
大久保は「ボールが浮いていたので振り抜かず、インサイドに当てようと思った。ボールが強かったしね。でも上に行ってしまった」と悔しがった。
後半27分には左サイドの長友が上げたクロスを岡崎がゴール前で粘り、右サイドから走り込んだ内田がシュート。これも枠外だった。
後半40分過ぎからは吉田麻也を前線に上げてパワープレーを試みたが、これも不発に終わった。
コートジボワール戦に続いてパワープレーを選択したことに疑問を向ける声に対して、ザッケローニ監督は「やらないと言っていたのをやったということではない。私たちは4年間一つの方向を目指して進んできた。テクニックと速攻で攻める。それを変えるようなことはしなかった」と、方向性を変えたのではないということを強調する。確かに、最後の最後で10人の相手に対してセンターバックの吉田を上げるのはセオリーから外れてはいないだろう。