ブラジルW杯通信BACK NUMBER
硬直した采配と残酷なベンチ風景。
ギリシャ戦、なぜ交代枠を残したのか。
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byTakuya Sugiyama
posted2014/06/20 12:40
必勝を期して挑んだ第2戦、手にしたのは失望の勝ち点1だった。「優勝を目指す」そう公言して臨んだW杯を、こんな形で終わらせるわけにはいかない。
「出られないのは悔しいけど、出てる選手はもっと悔しい」
むしろ疑問が大きいのは、3枚目の交代カードを切らなかったことだ。
10人で守備を固めていたギリシャだが、バイタルエリアにはスペースがあった。それはピッチ内の選手も感じていたし、ピッチ外から齋藤も自らのプレーイメージを重ねながらその状況を見つめていた。
「(香川)真司君が左に入ったので自分が入るなら右かなと思って見ていたし、バイタルでやれるかなというイメージで見ていた」
「最後はフォーメーションを言っている場合ではなかったと思う。出られないで負けるのは悔しいけど、出ている選手はもっと悔しいと思う。このチームの力になれるようにもっとやっていきたい」
試合後にそう話したが、彼が最も生きるシチュエーションで出番がなかったことを受け止めるのは容易くはないだろう。
指揮官は「交代選手を結果として一人代えなかったことについては、内田と長友を動かしたくなかったのと吉田を前に持ってくる作戦を敷いたからだ。私は3人目の交代は青山(敏弘)を考えていた」と説明した。しかし、なぜ青山だったのかは不明だ。
「残り45分間は祈るしかなかった。結果は非常に悔しいけど、自分たちがやろうとしている形を出そうというのは、初戦とは比べものにならないくらいやれたと思う」
長谷部は気丈にもそう言い、さらに続けた。
「コロンビア戦でやることはハッキリしている。勝たなければいけないし、より点を取らなければいけない。他力の部分はもちろんあるけど、やるべきことは非常にクリア。チーム全員でもう一度そこに向けて準備をするという意味では、自分がリーダーシップをとり、先頭切ってやっていきたい」
浮かび上がる、指揮官の「揺れ」。
この試合でマンオブザマッチに選ばれた本田圭佑は、同賞の会見で、「コロンビア戦は勝ち点3を目指してより攻撃的なサッカーをしたい。今日の試合は攻撃的にはいったけど優秀なギリシャの守備の壁を破ることができなかった。勝ち点1という結果に満足はしていない」と淡々と言った。
選手は内省し、心を合わせて前に行こうとしている。選手によって考えの差異も多少は見られるが、それでもチームとしての均衡はどうにかキープしている。先発とサブの温度差も見られない。
そんな中、指揮官が揺れている姿が色濃く浮かび上がっている。ザックジャパンはどこへ行くのか。