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日本球界に乗り込むキューバの英雄。
門戸開放の陰に「亡命」と「裏開催」。 

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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photograph byNaoya Sanuki

posted2014/05/16 10:50

日本球界に乗り込むキューバの英雄。門戸開放の陰に「亡命」と「裏開催」。<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

巨人入りしたセペダ(右)やDeNA入りが決まったグリエルは、キューバ代表としてWBCや五輪、親善試合などで日本との対戦経験がある。シーズン途中からの加入で、本領を発揮できるか。

キューバ側にとっても大物の海外流出は問題だった。

 一方、キューバ政府側にとっても、有力選手が無償で海外に流出してしまう現況には、これまでも頭を悩ませていた。特に'11年には厳重な監視の目をかいくぐってヨエニス・セスペデス外野手が亡命してオークランド・アスレチックスと契約。さらに昨年8月には、その年のWBCで主砲として活躍したホセ・アブレイユ内野手が遠征先で大使館に駆け込んで亡命する事件が起こり、これが今回の規制緩和の大きな引き金になったという。

 同年9月にキューバ政府が自国のスポーツ選手の国外プロ活動を容認する決定を発表。それを受けて動いた巨人、DeNAの両チームが、先陣を切る形で両選手の入団にこぎつけたわけである。

 実は今回の移籍で、当初、巨人もグリエル内野手を獲得希望の上位候補として挙げていた。ただし内野手ではなく外野にコンバートして起用したいという希望を伝えると、キューバ側からは「コンバートは国内に戻ったときに影響が出る」という理由で拒否され、その結果、グリエルの巨人入りは消えたという。そうして改めて外野手の一番手だったセペダで交渉した結果、入団が決まったというのが経緯だった。

キューバリーグがオフの間、日本に“貸し出す”。

 そしてこの流れの中に、今回のキューバ選手獲得の大きなカギが隠されているのである。

 実はキューバの選手は日本球団と契約しても、その契約期間は11月末までで、12月には地元リーグに戻って所属チームでプレーすることになる。キューバの国内リーグ「セリエ・ナシオナル・デ・ベイスボル」は12月にシーズンがスタートして、日本の日本シリーズに当たるスーパーリーグが終了するのが4月中旬というスケジュールなのだ。

 3月末に開幕する日本のプロ野球とは、ほぼ日程が重ならない、双方にとって裏開催となるわけだ。だから自国リーグが行なわれない期間だけ、日本に“貸し出す”形でプロ契約を認めるというものなのである。

 これなら選手は20%をキューバ連盟に支払っても、プロ契約年俸の80%を手にできる。セペダの例なら年俸1億5000万円の80%を手にした上で、なおかつ母国の英雄としての地位も家族も失うことなくプレーができるわけである。野球選手の月給がほぼ2000円前後と言われるキューバの経済状況に鑑みれば、ある意味、十分過ぎるほどの収入は保証されるわけである。

【次ページ】 今回の移籍を機に、より多くの選手が来日するように。

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