プロ野球亭日乗BACK NUMBER
日本球界に乗り込むキューバの英雄。
門戸開放の陰に「亡命」と「裏開催」。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNaoya Sanuki
posted2014/05/16 10:50
巨人入りしたセペダ(右)やDeNA入りが決まったグリエルは、キューバ代表としてWBCや五輪、親善試合などで日本との対戦経験がある。シーズン途中からの加入で、本領を発揮できるか。
今回の移籍を機に、より多くの選手が来日するように。
キューバ球界にとっても、20%のコミッションを手にした上で、自国リーグへの影響もほとんどない形で有力選手の流出に歯止めをかけられる。
選手にとってもリーグにとっても、これまでとは違った形で共存の道が開けるわけである。
日本球界にとってみれば、裏開催というメリットを最大限に生かすことが、今後も一番の狙いとなるだろう。
今回の移籍をきっかけに、今後はもっと選手の裾野を広げていくことも可能になるだろう。例えば野手だけでなく投手を含めて、20代のバリバリの選手や、まだまだ代表クラスではなくとも能力の高そうな若手の有望選手などの獲得を射程に入れてスカウティングを進めることになる。
巨人は今回の契約を機に、キューバの野球連盟と友好条約を締結して、今後もコーチの受け入れなど交流を図る一方、中南米担当スカウトを新設して、よりきめ細かい調査を行なうことを決めている。もちろん、中南米にコネクションを持つ中日や他球団が黙って見ているわけもないだろう。
そういう意味では、今回の移籍は単に選手を獲得しただけではなく、より大きな意味で両国の球界にとってメリットを生む契機となるのは確実なのである。
MLBは日本の解禁を歓迎してはいない。
そしてもう一つ忘れてはならないのが、MLB側の反応である。
元々米国は、キューバとの商取引を禁止している。そこで米国の球団が直接、キューバ選手、及びキューバ野球連盟と契約ができないため、今回の規制緩和の対象外とされてきた。
「もちろん今回の両チームの契約に対して、余計なことをしてくれたというのはあるし、面白く思っていないのは事実です」
こう語るのはMLBに詳しい球界関係者だった。