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イビチャ・オシム、日本への提言。
「メディアも選手も監督も準備せよ」
text by
イビチャ・オシムIvica Osim
photograph byTakuya Sugiyama
posted2014/05/12 16:30
オシムは内田について「なるようになるだろう」と語っていたが……。5月12日、自身2度目のW杯代表メンバー入りを決めた。
メッシばかりに可能性があるわけではない。
――とりわけワールドカップまでにどうなるかですね。というのも、もし彼のコンディションが万全ならば、今度のワールドカップは彼の大会になるのではないでしょうか?
オシム しかしメッシばかりにその可能性があるわけではない。他にも何人か新しい選手が出てくるのを待つべきだろう。彼らも……。
――メッシのようになりますか?
オシム それはどうか。メッシを上回るのは難しい。というのも似たような選手がいるのであれば、彼はすでに知られている。どこの出身でいつ買われてきたのか、どこで育成されたのか……。ずっと前から注目を集めていたはずだ。しかしそうした話を聞かないということは、クラブやスカウトが血眼になって探しても、その辺の街角にメッシはそうそういないということだ。幸いなことにというべきか……。というのもあまりに値段が高いからだ。
――しかしゴロゴロいたら、値段も下がるのではないですか(笑)。
オシム それはそうだが、今日の世界は金もそう豊富にはない。だから誰もがサッカーから利益を得たいと思い、誰もがメッシを見つけてバルセロナに送り込みたいと考える。しかしひとりのメッシを見いだすには、スタジアムを建てねばならないし、サッカーの文化も確立しなければならない。膨大な時間とエネルギーがかかる。金もかかる。
古い文化を模倣するのはあまりに安易だ。
――それだけの投資をすでにしているということですね。
オシム 2000年の歴史を持つ日本文化を昨日今日で模倣できないのと同じだ。もちろんトライはできるが、それでどうなるものではない。古い文化を模倣するのはあまりに安易だ。マヤやインカ、アステカ。日本や中国の文化もだ。それらが素晴らしすぎるだけに安易だ。そこまでのものを今日まで培ってきた人々に対してもコレクトではない。
夫人 もうだいたい済みましたか?
――ええ、大丈夫です。これはレキップ・マガジンのブルガリア戦回顧号です。'94年のアメリカ・ワールドカップ予選で、フランスがブルガリアに逆転負けを喫して本大会出場を逃した試合を(プレーオフの直前に)振り返っています。
オシム イスラエルとブルガリアに連敗して、出場を逃したときのことだな。
――ええ、2試合で勝ち点1をあげればよかったものを、どちらも試合終了間際に得点を決められて負けてしまいました。そのブルガリア戦の20年後のルポルタージュです。
オシム 私はそのときアテネにいた。
――パナシナイコスですね。
オシム 試合はテレビで見た。国家的な悲劇だった。
――コスタディノフのゴールは、本当に終了のホイッスルが吹かれる直前でした。
オシム ブルガリアは素晴らしいチームだった。
――フランスにもカントナやパパン、ジノラらがいて素晴らしいチームでした。
オシム ブルガリアもストイチコフやコスタディノフ、バラコフ……。素晴らしかった。