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イビチャ・オシム、日本への提言。
「メディアも選手も監督も準備せよ」
text by
イビチャ・オシムIvica Osim
photograph byTakuya Sugiyama
posted2014/05/12 16:30
オシムは内田について「なるようになるだろう」と語っていたが……。5月12日、自身2度目のW杯代表メンバー入りを決めた。
最終的には問題ではなくなるだろう。
――どうなっているかわからない。
オシム だがそれを言い訳にしては駄目だ。すぐに言い訳を考えたがるが、そこは気をつけねばならない。まだ完成していないスタジアムもあることだし、もう少し様子を見てみよう。
――すべてに関して、こんな風に注意深く準備するということですね。
オシム ああ、だが最終的には問題ではなくなるだろう。というのも大会に出場するほとんどの選手はヨーロッパでプレーしていて、日常的なピッチ条件にそう違いはないからだ。
――誰もが条件は同じということですね。
オシム 誰かに有利ということにはならないし、さほど心配の種にもならないだろう。確かに怪我の危険はあるかもしれないが、すべてうまくいって欲しいと願っている。
プレーする限りは怪我の危険は常にある。サッカーという競技はそれを常に内包している。サッカーとはそういうスポーツだ。だからこそ、それにどうやって対処していくかというスキルを身に着けていかねばならないわけだ。
砂の問題もそうだし、さまざまな事柄が立て続けに起こると人はパニックに陥る。サッカーをプレーする限りは、常に戦いや接触プレーがあり、疲労がたまり筋肉に問題が出てくるのは当然だ。単純ではあるが、そこで十分な対応ができなければサッカーはプレーできない。だが、ヨーロッパでプレーする選手に関しては、それは問題にならないだろう。
――それだけの経験を積んでいると。
オシム それよりも問題はメンタルだ。不安やメディアなどのプレッシャーからどれだけ解放されるか。恐らく少し休養が必要かもしれないし、家族とともに過ごしてサッカーのことを少し忘れるのが良いかも知れない。もちろんまったく考えないことなどできないが、それでも……。
――直前合宿に集合する前に、ですね。
オシム これだけ大きなイベントであるのだから、それを意識しないということはできない。そう言ってしまうのは、サッカーに対してコレクトであると言えない。2年以上も待ち望んだワールドカップを、今はまったく考えていないなどとは言えない。
実際、何が起こるかなどわからないのだから。
それで君は身体の具合はどうだ? 家族も元気か?
――ええ、おかげさまで何とかやっています。
オシム (元気か?というのは)ごくありふれた言葉だが、誰に対しても常に問いかけるべき言葉でもある。実際、何が起こるかなどわからないのだから。
――それで今、日本の人々は23人の選手発表を待っています。
オシム 選手のリストか。
――5月12日に発表されることになっています。
オシム 何人かの選手に問題があるのか。怪我以外にも。
――怪我人がいるのもそうですが、ザッケローニは18人ぐらいまでは……。
オシム (監督の)好みの問題だ。むしろ問題は……、ザッケローニと彼のスタッフの心配の種は、相手をよく見極めることだ。相手に応じて選手を選ぶという側面もある。どんな相手と戦うためにどういう選手が必要か。まずそこをハッキリさせる必要があるからだ。
――おそらく18~19人まではすでに選んでいると思いますが、そこから先の4~5人はまだ確かではないように思います。
オシム そうなのか?
――少し頭が痛いのではないでしょうか?
オシム いやいや……。すべてをしっかりと準備せねばならない。メディアも選手も監督も……、誰もがだ。
というのもまったく新しいことというのは衝撃であるからだ。だから準備をしっかりして、そうでないと何かが起こったときに……、経験がないからと言い訳をする。それはそうだ。ワールドカップは毎年開催されているわけではないから、そうそう経験を積めるものではない。4年ごとの大会なのだから、その機会をできる限り逃さず出場を続ける以外にやりようはない。それだけが明日に繋がっていく。そうでないと、ブラジルは素晴らしかったというだけで終わってしまう。
開催国のブラジルはワールドカップ最多優勝を誇り、再び優勝するために準備をしている。選手にとっては、これ以上はないプレゼントだ。2度と人生に訪れることはない。
日本のみなさんにくれぐれもよろしく言ってくれ。