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ガンバはなぜ残留争いに甘んじるか。
“個の伝統”が新スタイルの障害に?
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2014/05/09 11:40
「今日やってみて、チームの伸びしろというか、コンビネーションはまだまだ良くなると感じたので。もっと勢いをつけていけると思います」と徳島戦後に語った宇佐美。ガンバのV字回復に期待がかかる!
2005年のJ1優勝時のサッカーはもはや不可能。
ガンバの攻撃的サッカーというと、2005年のJ1優勝を果たした時のイメージが非常に強い。当時は、アラウージョやマグノアウベスら強力なFWを獲得し、日本人選手も代表クラスが多かった。優秀な外国人FWに引っ張られる形で多彩な攻撃を仕掛け、サイドや中央などどこからでも相手のゴールをこじあけることができた。
だが、今は選手の顔触れが変わり、予算の都合で思うような補強もできない状況だ。宇佐美に歴代の外国人FWの役割を果たせるだけのポテンシャルがあるのは間違いないが、あの頃と同じサッカーを実現するのは現実的ではなくなっている。
長谷川監督自身も、特定の選手依存型ではなく、連動して相手の守備を崩していくサッカーを志向している。スペシャルな外国人FWがいない分、個々の選手がパスや動きで相手の守備に揺さぶりをかけ、スペースを突いてチャンスを作っていく。その手段のひとつとして長谷川監督は攻守の切り替えの速さを要求してきたが、まだ求めるレベルには達していない。
「これで終わるようじゃ、ガンバも甘い」
また、徳島戦は宇佐美の復帰や得点パターンが増えるなど今後に向けての光明が見えたが、逆に言えば宇佐美に任せきっているようにも見えた。宇佐美、遠藤らに頼る従来のスタイルから脱却し、攻撃の中身を変えることが十分に出来ていないのだ。
「これで終わるようじゃ、ガンバも甘いと思う」
宇佐美はそう語り巻返しを誓ったが、徳島に勝って連敗を止めても諸手を挙げて喜べないのは、チームの本質的な問題がまだ解決されていないことを自覚しているからである。
W杯中断まで残り2試合。徳島戦で見せたサッカーを継続しつつ、攻撃の中身を変え、勝ち切ることができるかどうか。それが今後、ガンバ復活と上位浮上のポイントになるだろう。