Jをめぐる冒険BACK NUMBER
「繋いで崩す」と「危険なミス」の間で。
ACLでも貫く川崎の“常識破り”哲学。
posted2014/05/09 16:30
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph by
AFLO SPORT
試合後の取材エリアで敗戦を分析した中村憲剛の表情は、最後まで険しいままだった。
ACLのラウンド16、FCソウル戦。まだ第2戦が残っているとはいえ、ホームで2度のリードを守れず2-3での敗戦は痛恨だった。それも後半の途中まで完全に勝ちゲームだったのだから、落胆の色を隠せないのも無理はない。
サンフレッチェ広島、川崎フロンターレ、セレッソ大阪の3チームがグループステージを突破した今季のACL。5月6日、7日に行なわれたラウンド16の第1戦は、ホームに広州恒大を迎えたセレッソ大阪が1-5で敗れるという衝撃的な大敗を喫したが、川崎の敗戦も、それとは異なる意味で、ショッキングなものだった。
スタイルへの自信を掴んだかに見えた前半。
しかし、このゲームを「ボールをつなごうとするJリーグのチームが、フィジカルや闘う姿勢に優るKリーグのチームに敗れた典型的なゲーム」と捉えるのは、誤りだろう。
川崎はその図式を確かに超越していた。川崎は攻めあぐねて横パスばかりを繰り返していたわけではなく、相手の急所へ縦パスをどんどん打ち込んでいたのだ。
ハーフタイムを迎えた時点で川崎は11本のシュートを放ち、4つの決定機を築いた。それに対してFCソウルの決定機はゼロ。それどころかシュートを1本も打てなかった。
この時間帯に川崎がゴールを決めていれば、という見方も確かにできる。だが一方で、「90分で勝てればいいと思っていた。慌てて取られて、カウンターから失点するのだけは嫌だった」という中村の考えにも頷けた。実際、攻めのリズムと丁寧さを辛抱強く保った川崎は、後半開始早々に先制に成功した。
一方的に押し込み続けた前半、川崎の選手たちは、自分たちのスタイルに対するさらなる自信を掴めたに違いない。