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“カオス”を生み出す超攻撃的3-4-3。
湘南が挑む、目が離せないサッカー。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byShonan Bellmare
posted2014/05/09 10:40
12節終了時点で、34得点5失点。全く他を寄せ付けない強さを発揮するチームは、同時にまだまだ伸びしろのある若いチームでもある。チームとしても、選手個々としても、そのキャリアは決して今がピークではない。
前編『J2降格も監督続投で、開幕12連勝! “湘南スタイル”に潜む
2つの秘密。』からお読みください。
就任3年目となる2014年シーズンを迎えるにあたって、湘南ベルマーレの曹貴裁(チョウ・キジェ)監督の心は揺れていた。
2012年に反町康治前監督(現松本山雅監督)の後任としてヘッドコーチから昇格し、就任1年目でチームをJ1へ導いた。しかし、国内トップステージでのチャレンジはわずか1年で終わりを告げた。
チームの成績だけを見れば、浮き沈みは激しい。それでも、曹監督の眼に映るチームは成長を遂げていた。メディアが“湘南スタイル”と評するアグレッシブな3-4-3は、結果を超えた部分で選手を少しずつ高みへ押し上げていた。
同時に彼は、小さな危惧を抱いていた。
「対外的にも発信できるようになった我々のスタイルは、変えてはいけない。ただ、2013年まではスタイルありきのサッカーというか、スタイルを出していくことがすべてに近かった。スタイルに酔うというか、居心地の良さを感じてはいけない。勝点3を取るため、勝ちきるためのスタイルでなければ意味がない」
湘南スタイルのバージョンアップと、選手個々のレベルアップを加速させるにはどうしたらいいのか。J2で戦いながらも、同時進行でJ1との差を埋めていくための最適解とは?
自分たちのよさをだすべく、攻撃時の2バックを敢行。
昨シーズン後に赴いたヨーロッパでも、思いは揺れ動くばかりだった。
「新加入選手には4バックのタイプがいるし、トップ下ができる選手もいる。カオル(高山薫)、(ハン・)グギョン、大野(和成)らが抜けたこともあるし、違うスタイルもいいかなあと。4-2-3-1も面白いかな、と思ったんですよ」
4-2-3-1の強みを思い浮かべると、すぐに3-4-3の長所が追いかけてくる。2014年シーズンが始動する直前まで、複数の選択肢が胸中で渦巻いていた。
煩悶のすえに辿り着いた答えは、3-4-3の深化だった。
「プレッシングという刀を持ちながらも、どうやったら自分たちの良さが出るのかを考えたときに、相手の2トップに対して2人で守ろうと。3バックのひとりを、攻撃に出す。最終ラインは2対2になるけれど、ボールが敵陣の深いところにあればそれほど危険ではない。世界的に見ると、3バックの外側の選手でビルドアップができるタイプはいる。でも、あくまで僕が観た限りですが、どんどんと攻撃参加をする発想を持った選手はいない。ユベントスもフィオレンティーナも違うけど、ウチの選手の力量ならできるんじゃないか。よしっ、これでいこうと」