詳説日本野球研究BACK NUMBER
大型補強の陰で着実に進む育成路線。
ソフトバンクの“生え抜き”抜擢論。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNanae Suzuki
posted2014/05/10 10:50
昨年ゴールデングラブ賞を獲得したソフトバンク・今宮健太。川崎宗則が2012年にメジャーに移って以降、堅守のショートとしてスタメンに定着した。俊足であり、投手経験者として送球の正確さも持ち合わせる。
主力投手は軒並み30代、世代交代が待たれる。
成功の判断は私の独断と偏見なので「あの選手がいない、この選手がいない」と言われる方もいると思う。セ一塁手の筒香は私の中ではまだ成功未満だが、筒香がいないとセの一塁手が不在になるので窮余の一策として入れた。そういう筒香のような成功予備軍はセには18人いる(パは12人)。松山竜平(広島)、石山泰稚(ヤクルト)、橋本到、中井大介、藤村大介(巨人)、山内壮馬、岡田俊哉(中日)、上本博紀(阪神)などである。
パにも中島卓也、谷元圭介(日本ハム)、坂田遼、高橋朋己(西武)、塩見貴洋(楽天)などがいて、ソフトバンクの若手投手、千賀と武田もそういう“成功未満”の期待選手である。
話を再びソフトバンクに戻すと、主力投手の柳瀬、寺原(30歳)、攝津正、中田(31歳)、サファテ、ウルフ(33歳)、五十嵐、帆足(34歳)、スタンリッジ(35歳)、岡島秀樹(38歳)はいずれも30歳を超えるベテランなので、若手と徐々に入れ替えていかなければならない。そういう準備が楽天、日本ハムにくらべるとのんびりしているように見える。
打率は1位、防御率は離れた2位、課題は明白だ。
ここまで書いてきたように若手抜擢の機運がパ・リーグ全体にみなぎっているので、新旧交代を間断なく進めていかないと今のパ・リーグで勝っていくことは難しい。そういう覚悟が野手の顔ぶれを見ていると伝わってくるが、投手起用では依然として志半ば。あとは若手投手陣の意識改革と、首脳陣の抜擢する気概の問題である。
5月6日現在、ソフトバンクはオリックスとゲーム差なし、勝率でわずか9厘上回っての首位を堅持している。チーム打率.288は2位オリックスの.259を断然引き離すリーグナンバーワンなのに対して、チーム防御率2.77はオリックスの2.59にかなり引き離されてのリーグ2位。課題は投手陣にあることは明白である。
若手抜擢に向けてどのタイミングで舵を切っていくのか、現在の私の最も注目するポイントはそこである。