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大型補強の陰で着実に進む育成路線。
ソフトバンクの“生え抜き”抜擢論。 

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小関順二

小関順二Junji Koseki

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photograph byNanae Suzuki

posted2014/05/10 10:50

大型補強の陰で着実に進む育成路線。ソフトバンクの“生え抜き”抜擢論。<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

昨年ゴールデングラブ賞を獲得したソフトバンク・今宮健太。川崎宗則が2012年にメジャーに移って以降、堅守のショートとしてスタメンに定着した。俊足であり、投手経験者として送球の正確さも持ち合わせる。

昨年のデータと比べても、突出した数字。

 私が「走るチーム」の目安にしているのが1試合3人の全力疾走で、これが簡単そうで簡単でない。昨年球場で見たプロ46試合(のべ92チーム)のうちタイムクリアしたチームは半分以下の41チーム。全力疾走率は45パーセントである。今年のタイムとくらべれば、ソフトバンクがどれくらい真面目に全力疾走に取り組んでいるかわかる。

 打者走者が打った瞬間から4.3秒未満で一塁まで駆け抜ける――。これは精神力の問題でもあるので、足が速いだけでは徹底できない。巷で囁かれる「資金力にモノを言わせた巨大戦力」という風評を真に受けると、素質頼りにバットをぶんぶん振り回すひと昔前の巨人のようなチームを思い浮かべてしまうが、実際のソフトバンクは投手ゴロでも一塁ゴロでも全力で一塁まで駆け抜ける選手が多い。

 そして、そういう選手はほとんど生え抜きの選手である。4月8、10、22、23日の西武戦、日本ハム戦でタイムクリアした選手を次に紹介しよう(以下、カッコ内の数字は打席数)。

◇4/8 西武戦
本多雄一……[1]二塁ゴロ3.98秒、[3]左前打4.11秒
今宮健太……[2]投前バント4.28秒
長谷川勇也……[1]投ゴロ4.09秒
松田宣浩……[1]三塁ゴロ4.29秒
柳田悠岐……[1]二塁ゴロ4.14秒、[2]遊撃ゴロ4.10秒

◇4/10 西武戦
本多雄一……[4]遊撃ゴロ4.06秒、[5]二塁ゴロ4.02秒、[6]遊撃ゴロ4.01秒
長谷川勇也……[6]二塁打8.25秒

◇4/22 日本ハム戦
本多雄一……[3]左前打4.20秒
今宮健太……[1]二塁ゴロ4.18秒
長谷川勇也……[3]二塁ゴロ併殺4.18秒
柳田悠岐……[4]遊撃ゴロ4.19秒
中村晃……[2]二塁ゴロ4.02秒、[4]遊撃ゴロ4.17秒

◇4/23 日本ハム戦
本多雄一……[3]三塁安打4.06秒、[4]遊撃ゴロ4.06秒
松田宣浩……[2]三塁安打4.24秒
柳田悠岐……[1]一塁ゴロ3.91秒
中村晃……[2]一塁ゴロ4.26秒、[4]二塁ゴロ4.11秒

 内川、李、細川(鶴岡)たち移籍選手には全力疾走をやかましく言わず、本多、今宮、長谷川、松田、柳田、中村たち生え抜きには全力疾走(チームプレー)を強く求めるという姿勢である。「育成」と「資金を投入した補強」の二段構えで野手陣を構成している現実がこれほどよくわかる現象は他にない。

【次ページ】 一方で、投手は移籍組の比重が大きい。

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