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大型補強の陰で着実に進む育成路線。
ソフトバンクの“生え抜き”抜擢論。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNanae Suzuki
posted2014/05/10 10:50
昨年ゴールデングラブ賞を獲得したソフトバンク・今宮健太。川崎宗則が2012年にメジャーに移って以降、堅守のショートとしてスタメンに定着した。俊足であり、投手経験者として送球の正確さも持ち合わせる。
4月22日に東京ドームで行なわれた日本ハム対ソフトバンク戦を見ていたら、ソフトバンクのスタメン9人のうち6人が生え抜きだと気づいた。
FA宣言した鶴岡慎也を日本ハム、中田賢一を中日から獲得し、外国人選手は李大浩をオリックス、ウルフを日本ハム、スタンリッジを阪神、サファテを西武から獲得しているので、他球団経由の“外人部隊”主体でスタメンを組んでいると早合点していたが、そうではなかった。
金持ち球団という先入観のため、ドラフト上位主体でスタメンが構成されているとも思いがちだが、本多雄一は'05年の大学・社会人ドラフト5巡、長谷川勇也は'06年の大学・社会人ドラフト5巡、中村晃は'07年の高校生ドラフト3巡の指名である。
また松田宣浩は希望枠('05年大学・社会人ドラフト)による入団だが、この年希望枠でプロ入りした9人のうち野手は武内晋一(ヤクルト)と2人しかいない。そういう投手偏重の雰囲気の中で松田を希望枠で指名して、松田は'13年のWBC日本代表に選出されるなど今や日本球界に欠かせない中心選手にのし上がっている。
今宮、柳田という意外な上位指名選手も成長。
'09年ドラフトで入団した今宮健太にも同じことが言える。指名順位こそ1位だが、この年は超高校級左腕・菊池雄星に6球団の1位指名が重なり、今宮は171cmの高校生野手ということもあり、“1位候補”という前評判さえなかった。そういう選手を1位で指名し、プロ4年目でゴールデングラブ賞を獲得する選手に育て上げているのだ。
'10年2位の柳田悠岐は、出身大学のプロでの実績が小林宏(元オリックスなど)以外ほぼない広島経済大学ということで上位指名するには腰が引けそうだが、その潜在能力の高さに注目し、躊躇なく2位指名した。
数年前、故障のため二軍でプレーしていた中日時代の井端弘和がテレビ番組の企画「球界ナンバーワンのスラッガーは誰だ」という設問に、二軍戦で対戦した柳田の名前を挙げている。その有り余るスラッガーとしての素質が今、徐々に開花しつつある。