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大型補強の陰で着実に進む育成路線。
ソフトバンクの“生え抜き”抜擢論。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNanae Suzuki
posted2014/05/10 10:50
昨年ゴールデングラブ賞を獲得したソフトバンク・今宮健太。川崎宗則が2012年にメジャーに移って以降、堅守のショートとしてスタメンに定着した。俊足であり、投手経験者として送球の正確さも持ち合わせる。
ドラフトとファームの併用がソフトバンクの持ち味。
ソフトバンクにも巨人や阪神と同様に根強いアンチが存在していて、彼らはそのチーム作りを「資金力にモノを言わせた補強戦略」と批判する。それは今年の李、鶴岡、ウルフ、中田、スタンリッジ、サファテの獲得を見れば納得できるが、その反面、ドラフトとファームのコーチングを駆使した育成路線の確かさもソフトバンクの持ち味と言っていい。
ここまで名前が挙がっていない江川智晃は「ドラフト1位」の看板がそろそろ通用しなくなる今季28歳の中堅で、過去9年間で最も活躍したのが昨年の打率.260(安打59、本塁打12)。こう書くと、選手生活の終焉が近い中堅選手を思わせるが、4月22日の日本ハム戦の試合前フリーバッティングで弾丸ライナーのスタンド越えを連発して驚かされた。
5月6日現在、10打数3安打と活躍の場を与えられていないが、3安打の内訳を見ると本塁打1、二塁打1と長打が多い。長打率.700、出塁率.364だからOPSは1.000を超えている。長打不足に悩む中日あたりなら即レギュラーどころか即クリーンアップも考えられるが、これは三重県の宇治山田商出身なのでつい中日の名前が出てしまっただけで、他意はない。
実は、盗塁数も12球団ナンバーワン。
そしてソフトバンクと言えば内川聖一、李、松田、柳田と好打者、強打者が並ぶので“スモールベースボール”とは縁がなさそうだが、よく走る。5月6日現在の盗塁数は日本ハムと並ぶ32個で、これは12球団ナンバーワンである。
打者走者の走塁はどうだろう。私が全力疾走(俊足)の基準にする打者走者の「一塁到達4.3秒未満、二塁到達8.3秒未満、三塁到達12.3秒未満」をクリアした選手の数は、球場で測定した4月8、10日の西武戦、4月22、23日の日本ハム戦では次の通りだった。
ソフトバンク
4/ 8 5人(7回) → 西武4人(6回)
4/10 2人(4回) → 西武2人(2回)
4/22 5人(6回) → 日本ハム3人(5回)
4/23 4人(6回) → 日本ハム3人(3回)