Jをめぐる冒険BACK NUMBER
「繋いで崩す」と「危険なミス」の間で。
ACLでも貫く川崎の“常識破り”哲学。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byAFLO SPORT
posted2014/05/09 16:30
完璧だった川崎のゲームプランは、ミスの連続で脆くも潰えた。アウェーゴールを3点与えての敗戦で、勝ち上がりには2-0以上の勝利が必要になったが、今の川崎にとって決して不可能なミッションではない。
中村「うちのサッカーは、ある意味ACL向き」
風間八宏監督のスタイルは、自分たちが主導権を握って相手を押しこむことを前提にしている。また、相手の動き(監督の言葉を借りれば「矢印」)の逆を突き、相手に触られないサッカーでもある。
今季の開幕前、中村は「うちのサッカーは、ある意味、ACL向きとも言える」と話していた。
「ACLはJリーグ以上に相手がなりふり構わず引いてるし、Jリーグ以上にガツガツ来る。そんな相手にこそ、うちのサッカーは有効だから」
前半はまさに、その言葉を証明するような内容だった。FCソウルがファウルも辞さない激しさで(実際、何度もアフターファウルがあった)チャージやタックルを仕掛けてきたが、川崎はさほど苦にしなかった。相手の出てくる勢いを利用していなし、食い付いて来たことで生まれるスペースを使って攻め続けた。
このままでは奪えないと悟ったのか、FCソウルは前半の半ば過ぎから守り方を変更してきた。食い付くのは辞めて、ブロックを築き、引いて守ってきたのだ。
だがそれも、川崎の前ではあまり意味をなさなかった。川崎の攻撃陣は相手のディフェンスラインに出入りしてDFを動かすと、ワンタッチのパス交換で相手の守備組織を崩していく。
大久保の突破から理想的な展開で1点を先制。
待望の先制点は49分に生まれた。大久保嘉人が左サイドでDFを振り切ってクロスを上げると、中央ややファーサイドで待っていた小林悠が頭で合わせた。ここまでの流れを「理想的だった」と振り返ったのは、田中裕介だ。
「相手は前半、中を締めたら外が空き、外を締めたら中が空いて、あまり絞り切れていなかった。その流れで1点が取れていれば良かったですけど、後半、早い時間帯に先制点が取れたので、理想的な展開だったと思います」