Jをめぐる冒険BACK NUMBER
「繋いで崩す」と「危険なミス」の間で。
ACLでも貫く川崎の“常識破り”哲学。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byAFLO SPORT
posted2014/05/09 16:30
完璧だった川崎のゲームプランは、ミスの連続で脆くも潰えた。アウェーゴールを3点与えての敗戦で、勝ち上がりには2-0以上の勝利が必要になったが、今の川崎にとって決して不可能なミッションではない。
勝ちゲームを落とした最大の要因は個人のミス。
それなのに、なぜ敗れてしまったのか――。最大の要因を挙げれば、個人のミスということになる。
先制したわずか2分後に奪われた失点は、中澤聡太がタッチライン際でボールをキープしようとして奪われ、そのままゴール前まで運ばれて、最後はエスクデロに決められたもの。
それでも61分にレナトがPKを決めて勝ち越しに成功したが、83分にキム・チウに目が覚めるようなミドルシュートを決められた。これも厳しいことを言えば、中途半端なクリアを拾われた上に、森谷賢太郎がキム・チウのマークを疎かにしている。
さらに痛恨だったのが、93分の決勝点だ。相手GKのキックのこぼれ球に対する処理をジェシが誤り、ユン・イルロクに独走されてしまった。
繋ぐスタイルは、ミスにもなりかねない諸刃の剣。
とりわけ1失点目と3失点目はあまりにイージーなミスだった。ただし2失点目も含め、その背景にはチームのスタイルとの関わりが見え隠れする。
「ボールを大事にしようとした」と中澤が振り返れば、ジェシは「クリアするのではなく、3点目を取るために繋ごうとした」と言う。2失点目に関しても、田中は「クリアしなければいけない場面だったかもしれないですけど、今やろうとしていることは、あそこから攻撃の第一歩にしようということだから」と説明した。
風間監督もその辺りのことが分かっているから、ミスに関して「それほど大きな問題として取り上げたくない」と言ったのだろう。
こうしたもったいない敗戦をなくすためには、結局のところ、指揮官も言うように「技術を高めること」「判断のミスをなくすこと」「自信を持ってやり続けること」に行き着くことになる。
どんな状況でもしっかり繋げるだけの技術を磨く。あるいは、ここはシンプルにプレーしておくという的確な判断を下す。逆に怖いのが、自信をなくして怖がって、何も考えずに蹴り出し、簡単にマイボールを放棄してしまうことだろう。