プロ野球亭日乗BACK NUMBER
“阿部の後継者”になれるか――?
注目したい巨人・小林誠司の育成法。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2014/03/06 16:30
日本生命からドラフト1位で巨人に入団した小林。広陵高校では、野村祐輔(現・広島)とバッテリーを組み、甲子園準優勝を果たした。端正なマスクも人気を集めそうだ。
捕手の育成における、2つの異なる考え方。
ただ実戦が始まると、開幕一軍の可能性も出てくるほど、小林の評判は上がってきている。
「とにかく肩が強い。キャッチングもしっかりしている。リード面ではまだまだ課題はあると思うが、それでも思った以上に一軍のレベルに順応できている」
指揮官の言葉にも少し変化が出てきている。
捕手の育成には2つの方法がある。
一つは出場機会の少ない一軍に置いておくより、二軍のレギュラー捕手として場数を踏ませて成長させようという考え。
そしてもう一つは、あえて最初は出場機会が少なくとも一軍の野球を肌で感じさせて、一軍のレベルでのリードや野球観を植え付けることに主眼を置くという考えだ。
ノムさんは、古田を手元において英才教育を行なった。
過去の例から見ると、ヤクルト時代に古田敦也捕手を育てた野村克也監督(当時)の考えは、基本的には後者だった。
「肩は一流、打撃は二流、リードは三流」
立命館大から社会人・トヨタ自動車を経て'89年のドラフト2位で入団した古田に対する、当初の野村監督の評価はそんなものだった。
その一方で当時の正捕手だった秦真司捕手は、打力には定評があったが肩の弱さ、守りに大きな弱点を抱えていた。何とか次の正捕手を育成することが、チームの大きなテーマだったわけである。
そこで野村監督は古田を一軍の自分の手元に置いて、英才教育を行なうことを選択した。
もともと野村監督は「捕手は高卒の方が大成する」「大学や社会人出身の捕手は、経験が多いだけに変な感性がついて、それがマイナスに作用する」という考えだった。ただ古田と接するなかで「社会人での経験から、工夫したプレーや考えるプレーを良く知っている」と評価も徐々に変化した。もちろん最初は控えでの一軍帯同だったが、ことあるごとに捕手のイロハを教え込み、シーズン前半で、レギュラーとしてマスクを被る捕手へと育て上げた。
これがノムさん流の正捕手育成術だったわけだ。