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“阿部の後継者”になれるか――?
注目したい巨人・小林誠司の育成法。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2014/03/06 16:30
日本生命からドラフト1位で巨人に入団した小林。広陵高校では、野村祐輔(現・広島)とバッテリーを組み、甲子園準優勝を果たした。端正なマスクも人気を集めそうだ。
いまそこにある危機――。
トム・クランシーのサスペンス小説でポピュラーになったこの言葉は、アメリカ憲法学の「明白かつ現在の危機」という言葉を小説的にアレンジしたものだった。
元々は表現の自由の内容規制に関する定義で、「近い将来に、実質的害悪を引き起こす可能性が明白で、しかもその害悪が重大であること」というのがその要件。これは憲法学だけでなく、我々の日常生活や仕事、組織でもさまざまなケースの危機管理に当てはめて考えることができる言葉ともいえる。
例えば巨人の「いまそこにある危機」とは、チームリーダーであり打線の軸であり、なおかつ捕手として守りの要となっている阿部慎之助捕手の後継問題が、まさにそれではないだろうか。
「レギュラー選手に何かがあっても、すぐに取って代われる選手が控えているのがウチの特長。代わりに出る選手のレベルも一定水準を維持しているから、チームとしては大きな戦力ダウンにならない」
こう語るのは巨人の原辰徳監督だ。
ただその原監督も、阿部の守る捕手に関しては、替えの利かないポジションと認めている。
阿部の衰え、という危機を解消するかもしれない選手。
身近な問題としては、もし、阿部がケガで長期欠場したら、どうその穴を埋めていくのか。加えて「いまそこにある危機」としては、その阿部があと数年で引退とまではいかないまでも、少なくとも一人で二役も三役も引き受けられなくなるときがくるということだ。
その現実が迫る中で、今年、どうもその危機を解消できるかもしれない選手が現れたようなのである。
今年のドラフト1位ルーキー・小林誠司捕手への首脳陣の評価が、当初の想像を越えて高くなっている。
「捕手は経験を求められるポジション。彼を将来的に扇の要に育てていくにはどうしたらいいかを考えながら起用していきたい」
宮崎キャンプで取材したとき、原監督は小林の育成に関してこう語っていた。ニュアンスとしては、キャンプ、オープン戦で一軍を経験させ、その後はファームで実戦起用して捕手としての経験値を上げる、という風に聞こえた。