社会人出身の小林も、立ち位置はまさに古田と同じ。

　さて、小林の話である。

　今の巨人では、このときの古田のように、すぐさま阿部に取って代わるということは、現実的には考えづらい。

　ただ、小林は社会人・日本生命出身でゲーム経験はしっかり積んできている。そういう意味では、とにかく二軍でも試合に出して、マスクを被らせることが育成につながるという段階の選手ではないのだ。その点は、まさにあのときの古田と同じ立ち位置なのである。

　それならあえて二軍に行かせるのではなく、一軍のベンチに置いて上の野球を肌で感じさせて、一軍の空気を吸わせて育てる。ある意味、エリート教育をしていくことも方法なのではないだろうか。

　そのためには捕手3人制をとる巨人では、何とか実松一成捕手との競争に勝って、「多少はムリをしてでも2番目の捕手として使ってみよう」と思わせる信頼を勝ち取ることが条件となるわけだ。ほぼ出場機会の巡ってこない3番目の捕手では一軍に残る意味はないからである。

週に1回小林がマスクを被ることができれば……。

　第2捕手として週に1回、小林にマスクを被らせることができれば、阿部を休ませることもできる。休ませなくても、場合によっては打撃を生かすために、一塁起用という幅も生まれる。

　その起用が小林自身を正捕手へと育てる、一番の実戦的な手段につながるわけである。

　3月2日のヤクルト戦（東京ドーム）で小林は先発マスクを被り、開幕投手を争う先発の菅野智之、内海哲也両投手をリードして6回まで無失点で切り抜けた。今後も何試合か先発起用してテストを行ない、首脳陣は3月中旬をメドに、最終的な今後の育成方針を決める意向だという。

　いまそこにある危機を回避するためにも……原監督の決断が注目される。