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松山英樹は棄権、石川遼は予選落ち。
それでも2人の未来は「バラ色」だ。
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph byAP/AFLO
posted2014/03/04 10:50
今季はすでに来季のシード権をほぼ手中にしている石川遼。ホンダ・クラシックでは予選落ちに終わったが、内容的にも昨年よりも大きく成長していることは明白だ。
米ツアーの舞台は西海岸から東海岸に移り、2月末からフロリダシリーズが始まった。その第1戦となったホンダ・クラシックは、タイガー・ウッズをはじめとするビッグネームが勢揃いするとあって、開幕前から大きな注目が寄せられていた。
その盛り上がりぶりは、ゴルフの大会というより、まるでお祭りだった。
カットラインぎりぎりで予選を通過したウッズが5アンダーで回って猛チャージをかけた3日目。観衆の興奮はすさまじかった。
だが最終日は、そのウッズが大崩れした挙句、13番で突然の棄権。ローリー・マキロイ(英国)が2012年以来の米ツアー優勝を飾ると思われていたが、4人によるプレーオフに持ち込まれてラッセル・ヘンリーに敗れ、サンデーアフタヌーンは波乱続きになった。開催コースのPGAナショナルを訪れた人々は、世界のトッププレーヤーたちの熾烈な戦いぶりと次々に起こるハプニングに文字通り日暮れまで酔いしれ、すっかり陽が沈んだ闇夜の中、大満足の笑顔をたたえながら帰路についた。
それほど盛り上がった大会だったというのに、日本で報じられた記事の大半は暗い論調ばかりだった。今季、米ツアーで戦う日本人は石川遼と松山英樹の2人だけ。その2人がどちらも初日から出遅れ、松山は2日目のスタート直前に左手首痛で棄権、石川は必死の巻き返しを図るも予選落ち。2人が揃って予選2日間で姿を消してしまったことで、日本の報道はダメダメムード一色となり、その報道を見聞きした日本の人々は、がっかりムードに包まれたことだろう。
「これまでにない逸材」と「米ツアー優勝」の距離。
確かに、残念な結果ではあった。だが、「まるでダメだ」と落胆しなければいけないほど2人のパフォーマンスが悪いわけでは決してない。そもそも落胆は期待の裏返しだ。米ツアーの現実、現状を超越し、飛躍しすぎた期待を抱いてしまうから、毎試合の結果に一喜一憂し、必要以上に落胆してしまうのだ。
日本でポンポンと勝利を重ねた大型新人。これまでにない逸材。そこまでは正しいとしても、その先に当然のごとく付される「米ツアー初優勝は時間の問題」というフレーズが、米ツアーの現実に即していないのだ。
そう、米ツアーの厳しい現実を知らずして、初優勝を一刻も早く挙げてほしいという期待だけが先走ってしまっている。当の本人たちは、石川も松山も「そんなに簡単に勝てるとは思っていない」にも関わらず、周囲の期待だけが現実離れした夢物語となって独り歩きしてしまっている。